「少年院」と「鑑別所」、どちらも未成年者が関わる施設ですが、その役割や目的には大きな違いがあります。 少年院 と 鑑別 所 の 違い を理解することは、日本の司法制度や、罪を犯した少年たちがどのように更生していくのかを知る上で非常に重要です。今回は、この二つの施設について、分かりやすく解説していきます。
目的と役割の違い:何が違うの?
まず、一番大きな違いは、それぞれの施設が「どのような目的」で存在しているかという点です。少年院は、すでに罪を犯し、裁判所から保護処分または少年院送致の決定を受けた少年たちが、社会復帰を目指して更生プログラムを受ける場所です。一方、鑑別所は、まだ裁判が終わっていない、あるいは少年院送致になるかどうかの判断がなされていない少年たちが、その間の「身柄を保護」し、「行動や心の問題を調査・分析」する場所となります。
具体的には、少年院では以下のような取り組みが行われます。
- 学業や職業訓練
- 道徳教育や心理的ケア
- 集団生活を通じた社会性の育成
これに対し、鑑別所では、少年たちの:
- 生育歴や家庭環境の調査
- 性格や非行の原因の分析
- 今後の処遇に関する専門的な意見の作成
といった、鑑別(かんべつ)という調査・分析が中心となります。
この表を見ると、その違いがより明確になります。
| 施設名 | 主な目的 | 利用される段階 |
|---|---|---|
| 少年院 | 更生教育、社会復帰支援 | 裁判で保護処分または少年院送致の決定後 |
| 鑑別所 | 身柄保護、行動・心理の調査・分析 | 裁判前、または調査・判定期間中 |
期間と在所者の状況:どれくらいの期間、どんな状態でいるの?
次に、それぞれの施設にどれくらいの期間滞在するのか、そして、そこで過ごす少年たちの状況についても違いがあります。少年院の期間は、少年たちの年齢や非行の程度、改善の進み具合によって大きく異なります。一般的には、数ヶ月から数年までと幅広く、処遇は個々の少年に合わせて決められます。少年院での生活は、教育や訓練が中心であり、社会復帰に向けた前向きな取り組みが行われます。
一方、鑑別所は、裁判が終わるまで、あるいは鑑別結果が出るまでの「一時的な保護・調査」が目的のため、在所期間は比較的短いです。数週間から数ヶ月程度が一般的です。鑑別所に入っている少年たちは、まだ罪が確定しておらず、彼らがどのような処遇を受けるべきかを判断するための情報収集が行われている段階です。そのため、少年院のような長期的な教育プログラムは行われません。
鑑別所での調査項目には、以下のようなものがあります。
- 面接調査 :本人や家族、関係者への聞き取り
- 心理検査 :性格や知能などを調べる
- 行動観察 :集団生活での様子を観察
少年院で受ける教育プログラムの例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 基礎学力向上 :読み書き計算などを学ぶ
- 職業訓練 :将来役立つスキルを習得
- 情操教育 :道徳観や社会性を育む
- カウンセリング :心のケアや問題解決の支援
職員の役割:どんな人が働いているの?
施設で働く職員の役割も、それぞれの目的によって異なります。少年院には、教育者、心理士、ソーシャルワーカーなど、少年たちの更生を支援するための専門家が多く配置されています。彼らは、個々の少年の特性に合わせた教育計画を作成し、学習指導や生活指導、カウンセリングなどを通じて、少年たちの立ち直りをサポートします。チームで連携し、多角的な視点から少年たちの成長を促すことが重要視されています。
対して、鑑別所では、鑑別官という専門の職員が中心となります。鑑別官は、法務省の職員であり、心理学や社会学などの専門知識を持ち、少年の行動や心理、生育環境などを詳細に調査・分析します。彼らの仕事は、裁判官が少年の処遇を決定するための正確な情報を提供することにあります。そのため、客観的かつ科学的なアプローチで鑑別を進めることが求められます。
鑑別官の主な業務は以下の通りです。
- 調査計画の立案 :どのような調査を行うか決める
- 資料収集・分析 :過去の記録や聞き取り結果などをまとめる
- 報告書の作成 :調査結果を裁判官に報告する
少年院の職員は、より長期的・継続的な関わりを持つことが特徴です。
- 教育担当職員 :学習や職業訓練を指導
- 生活指導担当職員 :集団生活や日常のルールを教える
- 心理士・カウンセラー :心の悩みや問題に寄り添う
- 医療担当職員 :健康管理や治療を行う
法的な位置づけ:法律でどう決まっているの?
少年院と鑑別所は、日本の「少年法」という法律に基づいて設置・運営されています。少年法は、非行をした少年に対して、教育的な観点から更生を促すことを目的としています。少年院は、裁判所が下した保護処分(少年院送致)を受けて、少年が「矯正教育」を受けるための施設として位置づけられています。これは、刑罰とは異なり、あくまで少年の健全な育成を目指すための措置です。
一方、鑑別所は、少年法における「鑑別」を行うための施設です。少年が非行に至った背景や、今後の更生の可能性などを専門的に調査・分析し、その結果を裁判官に報告することで、適切な保護処分を決定するための情報を提供します。鑑別所での措置は、あくまで調査段階のものであり、その後の処遇を決定する前の重要なプロセスとなります。
少年院は、以下のような法的根拠に基づいています。
- 少年法第26条 :保護処分の種類として少年院送致が定められている。
- 少年院法 :少年院での教育や処遇に関する詳細が定められている。
鑑別所は、主に以下の法的根拠に基づいています。
- 少年法第17条 :保護事件の調査において、鑑別所の利用が定められている。
- 少年鑑別所法 :鑑別所の設置や職員の職務などが定められている。
社会との関わり:社会とどう繋がっているの?
両施設は、社会復帰という共通の目標を持っていますが、その関わり方には違いがあります。少年院は、社会復帰に向けた教育・訓練の場であり、在所中から社会との繋がりを意識したプログラムが組まれることがあります。例えば、外部のボランティアとの交流や、社会見学などが実施されることもあります。また、退院後も、保護観察官などの支援を受けながら、社会生活への適応を図ります。
鑑別所は、主に調査・分析を行う場所であり、社会との直接的な関わりは限定的です。しかし、鑑別官が収集する情報の中には、家庭環境や学校、地域との関係など、少年の社会的な背景が大きく含まれます。これらの情報は、少年の更生に向けた処遇を検討する上で不可欠であり、間接的に社会との繋がりを意識した判断がなされることになります。また、鑑別所での調査結果が、その後の社会復帰支援の在り方に影響を与えることもあります。
少年院での社会復帰支援の例:
- 面接指導 :社会生活で役立つ知識やマナーを学ぶ
- 体験学習 :地域社会での活動を通じて実践力を養う
- 就労支援 :退院後の仕事探しや職業訓練のサポート
鑑別所における社会との関わりを考慮する点:
- 家族との面会 :家族との関係性の維持・改善
- 学校・職場との連携 :非行に至った原因や背景の把握
- 地域社会の調査 :少年の生活環境の理解
施設の種類:それぞれどんな施設があるの?
少年院には、その教育内容や対象となる少年の特性によって、いくつかの種類があります。例えば、学歴や非行の状況に応じて、職業訓練に重点を置いた「職業訓練所」、より高度な教育を行う「高度技能訓練所」、そして、より簡易な処遇を行う「矯正教育所」などがあります。また、年齢や性別によっても施設が分かれている場合があります。
鑑別所は、全国に設置されており、少年鑑別所という名称で運営されています。特別に種類が分かれているわけではなく、どこの鑑別所でも、法務省の管轄のもと、少年法に基づいた鑑別業務が行われます。ただし、規模や設備は施設によって多少異なる場合があります。
少年院の種類:
- 家庭裁判所調査官 :調査・分析の結果を裁判官に報告する
- 家庭裁判所調停官 :審判の進行を円滑に進める
鑑別所の役割を担う「少年鑑別所」は、全国に設置されており、その役割は一律です。
- 少年鑑別所 :未成年者の身柄を保護し、行動や心の問題を調査・分析する。
少年院と鑑別所は、どちらも未成年者の健やかな成長と社会復帰を支援するための大切な役割を担っています。それぞれの施設が持つ目的や機能の違いを理解することで、日本の司法制度や、未来を担う少年たちへの関わり方について、より深く考えるきっかけになるでしょう。