「がん」と聞くと、多くの方が「悪性腫瘍」を思い浮かべるでしょう。しかし、体には「良性腫瘍」という、悪性腫瘍とは異なる性質を持つものも存在します。この二つの「腫瘍」の最も根本的な「悪性腫瘍と良性腫瘍の違い」を理解することは、健康について考える上で非常に大切です。

腫瘍の基本的な性質:増え方と広がり方

悪性腫瘍と良性腫瘍の最大の違いは、その増え方と、体の中でどのように広がるかにあります。良性腫瘍は、一般的にゆっくりと、そしてできる場所にとどまって増殖します。まるで、庭に植えた木が、その周りだけで大きくなっていくようなイメージです。

一方、悪性腫瘍は、非常に速いスピードで増殖し、周囲の組織を破壊しながら広がっていきます。さらに、恐ろしいのは「転移」という性質です。血液やリンパの流れに乗って、体の離れた場所にまで移動し、そこで新たな腫瘍を作ってしまうのです。これが、悪性腫瘍が「がん」と呼ばれる所以であり、 治療を難しくする一番の要因 と言えます。

ここでは、それぞれの特徴をまとめた表を見てみましょう。

特徴 良性腫瘍 悪性腫瘍
増殖スピード ゆっくり 速い
周囲への広がり あまりしない する(浸潤)
転移 しない する

形と境界線:見た目の違い

腫瘍の形や、周りの組織との境界線も、悪性腫瘍と良性腫瘍を見分ける手がかりになります。良性腫瘍は、多くの場合、丸みを帯びた形をしており、周りの組織との間に、はっきりとした境界線が見られます。これは、まるで風船が膨らむように、周りを押し広げながら大きくなるためです。

しかし、悪性腫瘍は、形が不規則で、ギザギザしていたり、周りの組織に染み込むように広がったりします。そのため、境界線がはっきりせず、どこまでが腫瘍でどこからが正常な組織なのか、見た目だけでは判断が難しいことが多いのです。

以下のリストは、見た目の違いを分かりやすくまとめたものです。

  • 良性腫瘍:
    • 丸みを帯びた形
    • 境界線がはっきりしている
  • 悪性腫瘍:
    • 形が不規則
    • 境界線が不明瞭、またはギザギザしている

細胞の顔つき:顕微鏡で見る特徴

病理検査といって、腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で細胞の形や性質を詳しく調べる検査があります。この顕微鏡での「顔つき」の違いも、悪性腫瘍と良性腫瘍を区別する上で非常に重要です。

良性腫瘍の細胞は、正常な細胞に比べて、多少の形の違いはありますが、比較的整った形をしています。しかし、悪性腫瘍の細胞は、形が大きく崩れていたり、細胞の核(細胞の中心部分)が異常に大きかったり、染色性が強かったりするなど、「異型」と呼ばれる、正常とはかけ離れた特徴を多く示します。この細胞の「顔つき」の違いが、悪性度を判断する重要な指標となります。

顕微鏡で観察される細胞の変化を、番号をつけて見ていきましょう。

  1. 良性腫瘍の細胞:
    1. 形が比較的整っている
    2. 核の大きさや形に大きな異常が少ない
  2. 悪性腫瘍の細胞:
    1. 形が不規則で、大きさがバラバラ
    2. 核が異常に大きく、形もいびつ
    3. 核の染色性が強くなる
    4. 分裂像(細胞が分裂している様子)が異常に多く見られる

再発と治療:その後の経過

腫瘍が見つかった場合、その後の経過や治療法も、良性か悪性かで大きく異なります。良性腫瘍は、適切に切除されれば、基本的に再発することはほとんどありません。例えるなら、植木鉢から根っこごと抜いてしまえば、もう生えてこない、というイメージです。

しかし、悪性腫瘍は、たとえ手術で取りきれたように見えても、見えないところにわずかに残った細胞から再び増殖する「再発」のリスクがあります。また、転移している場合は、手術だけでは治せないこともあり、抗がん剤や放射線療法などの、より積極的な治療が必要になる場合が多いのです。

再発のリスクについて、まとめると以下のようになります。

  • 良性腫瘍:
    • 切除すれば、再発は稀。
  • 悪性腫瘍:
    • 切除後も、再発のリスクがある。
    • 転移している場合、治療が複雑になる。

進行の度合い:体の機能への影響

腫瘍が大きくなるにつれて、周りの臓器や組織に影響を与え、体の機能が損なわれることがあります。良性腫瘍でも、大きくなりすぎたり、重要な神経や血管を圧迫したりすると、症状を引き起こすことがあります。しかし、その影響は、基本的には腫瘍ができた場所にとどまります。

一方、悪性腫瘍は、浸潤(周囲の組織に染み込むように広がる)することによって、臓器の機能を直接的に破壊したり、栄養を奪ったりして、全身に影響を及ぼします。また、転移した先の臓器の機能も損なわれるため、生命に関わる重篤な状態に陥ることもあります。

体の機能への影響について、表で確認してみましょう。

影響 良性腫瘍 悪性腫瘍
局所的な圧迫 ありうる ありうる
周囲組織の破壊 ほとんどない する
全身への影響 少ない 大きい(転移によるものも含む)

「悪性腫瘍と良性腫瘍の違い」を理解することは、私たちが自身の健康と向き合う上で、非常に役立ちます。もし、体に気になる症状があったり、不安を感じたりした場合は、自己判断せず、必ず医師に相談するようにしましょう。

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