「抗生剤」と「抗菌剤」、どちらも細菌を退治する薬だから同じようなものだと思っていませんか?実は、この二つには大切な違いがあります。今回は、この「抗生剤 と 抗菌 剤 の 違い」を分かりやすく解説し、それぞれの特徴や使い分けについて学んでいきましょう。

抗生剤と抗菌剤:根本的な違いとは?

まず、一番大きな違いは、その「生まれ」にあります。抗生剤は、微生物(カビなど)が作り出す物質を元にして作られています。つまり、自然界に存在するものを「薬」として利用しているんですね。一方、抗菌剤は、化学合成によって作られたものを指します。人工的に作られた薬というわけです。

この違いは、効果の範囲にも影響を与えます。抗生剤は、特定の種類の細菌に効果を発揮するように作られていることが多いです。一方、抗菌剤は、より広い範囲の細菌に効果があるものや、特定の細菌に特化したものまで様々です。

どちらの薬も、細菌が原因の病気を治すために使われるものですが、その作用の仕組みや得意な細菌が異なるため、医師は病状に合わせて最適な薬を選んでいます。

それぞれの特徴をまとめると、以下のようになります。

  • 抗生剤:
    1. 微生物由来
    2. 特定の細菌に効果
    3. 例:ペニシリン系、セフェム系
  • 抗菌剤:
    1. 化学合成
    2. 幅広い細菌に効果があるものから、特定の細菌に特化したものまで
    3. 例:ニューキノロン系、テトラサイクリン系

抗生剤の得意なこと、苦手なこと

抗生剤は、古くから使われている薬であり、その歴史の中で多くの種類が開発されてきました。例えば、ペニシリンやセフェム系の抗生剤は、細菌の細胞壁の合成を邪魔することで、細菌を死滅させたり、増殖を抑えたりします。

抗生剤の大きなメリットは、その効果が比較的はっきりしていることです。風邪などで細菌感染を起こした場合、医師の処方箋通りに服用することで、症状が改善されることが期待できます。しかし、抗生剤はウイルスには全く効果がありません。風邪の多くはウイルスが原因なので、抗生剤を飲んでも治らないのはこのためです。

また、抗生剤を使いすぎると、細菌が薬に抵抗力を持つ「薬剤耐性菌」が出現するリスクがあります。これは、将来的に感染症の治療が難しくなるという、非常に深刻な問題です。

抗生剤の主な作用機序:

作用機序 説明
細胞壁合成阻害 細菌が生きるために必要な細胞壁を作れなくする。
タンパク質合成阻害 細菌がタンパク質を作るのを妨げる。
核酸合成阻害 細菌のDNAやRNAの合成を妨げる。

抗菌剤:多様なアプローチで細菌と戦う

抗菌剤は、抗生剤のように微生物由来ではなく、化学的に合成される薬です。そのため、より多様な構造や作用を持つものが開発されています。例えば、ニューキノロン系の抗菌剤は、細菌のDNAを複製する酵素を阻害することで、細菌の増殖を抑えます。

抗菌剤の中には、抗生剤よりもさらに広い範囲の細菌に効果を示すものもあります。また、特定の感染症に対して、より効果的な治療ができるように設計されているものもあります。これは、細菌の持つ様々な「弱点」を狙って作られているからです。

抗菌剤の選択肢が多いということは、患者さんの状態やアレルギーなどを考慮して、より適した薬が見つけやすいということでもあります。しかし、抗生剤と同様に、抗菌剤も乱用すると薬剤耐性菌の発生につながるため、注意が必要です。

抗菌剤の主な作用機序:

  • DNA複製阻害
  • 葉酸合成阻害
  • 細胞膜機能阻害

抗生剤と抗菌剤の使い分けのポイント

医師が抗生剤と抗菌剤を使い分ける際、最も重要なのは「何が原因の感染症か」ということです。細菌の種類を特定できているか、あるいは、どのような細菌が原因である可能性が高いかを推定して、その細菌に効果的な薬を選択します。

また、患者さんの年齢、体質、アレルギーの有無、腎臓や肝臓の機能なども考慮されます。例えば、特定の臓器に負担をかける可能性のある薬は避けるべきですし、アレルギーがあれば別の系統の薬を選ぶ必要があります。

さらに、感染症の重症度や、感染している部位も重要な判断材料となります。軽症であれば内服薬で十分な場合もあれば、重症の場合は点滴での投与が必要になることもあります。

使い分けの例:

  1. 肺炎の場合: 肺炎球菌など、特定の細菌が原因であることが多いため、その細菌に効果的な抗生剤が選ばれることが多い。
  2. 尿路感染症の場合: 様々な種類の細菌が原因となりうるため、より幅広い抗菌スペクトルを持つ抗菌剤が選ばれることもある。

薬剤耐性菌の脅威と正し

抗生剤や抗菌剤の使いすぎは、細菌が薬に効きにくくなる「薬剤耐性菌」を生み出す原因となります。これは、私たちが今後、感染症と戦っていく上で非常に大きな問題です。

薬剤耐性菌が生まれると、これまで効いていた薬が効かなくなり、治療が困難になります。それを防ぐためには、医師の指示通りに薬を服用し、必要のない時には抗生剤や抗菌剤を使わないことが大切です。

薬剤耐性菌を防ぐために私たちができること:

  • 医師の指示通りに、決められた期間、決められた量を服用する。
  • 症状が良くなったからといって、自己判断で服用を中止しない。
  • 風邪など、ウイルス感染症には抗生剤・抗菌剤は効かないことを理解する。

それぞれの代表的な薬の種類

抗生剤、抗菌剤と一口に言っても、その中にはさらに多くの種類があります。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。

抗生剤の例:

  1. ペニシリン系: ペニシリン、アモキシシリンなど。比較的副作用が少なく、幅広い細菌に効果がある。
  2. セフェム系: セファレキシン、セフトリアキソンなど。ペニシリン系よりもさらに幅広い細菌に効果があるものが多い。

抗菌剤の例:

  • マクロライド系: エリスロマイシン、アジスロマイシンなど。
  • テトラサイクリン系: テトラサイクリン、ドキシサイクリンなど。
  • ニューキノロン系: レボフロキサシン、シプロフロキサシンなど。

まとめ:賢く使い分けて健康を守ろう

抗生剤と抗菌剤、その違いがお分かりいただけたでしょうか?どちらも細菌感染症の治療に不可欠な薬ですが、その成り立ちや作用の仕方が異なります。医師は、これらの違いを理解し、患者さんの状況に合わせて最適な薬を選択しています。

私たち自身も、これらの薬について正しく理解し、医師の指示をしっかりと守ることが大切です。風邪はウイルスが原因であることがほとんどなので、安易に抗生剤や抗菌剤を求めるのではなく、まずは休息をとることが重要です。そして、もし細菌感染症にかかった場合は、処方された薬を正しく使い、薬剤耐性菌の発生を防ぎ、健康を守っていきましょう。

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