「歯肉炎と歯周病の違い」について、皆さんはどれくらいご存知でしょうか? 実は、これらは似ているようで全く違う病気であり、その違いを理解することは、お口の健康を守る上で非常に大切なのです。

歯肉炎と歯周病:初期段階と進行形

まず、一番大きな違いは、病気がどれくらい進行しているかという点です。歯肉炎は、歯周病の初期段階と考えると分かりやすいでしょう。歯と歯茎の境目にプラーク(歯垢)という細菌の塊が溜まることで、歯茎に炎症が起こります。この段階では、歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの時に血が出たりといった症状が見られますが、まだ歯を支える骨には影響が及んでいないのが特徴です。

一方、歯周病は、歯肉炎が進行し、歯を支える歯茎や骨にまで炎症が広がった状態を指します。プラークの中の細菌が出す毒素によって、歯茎がさらに下がり、歯の根元が露出し、さらには歯を支える骨(歯槽骨)が溶かされてしまうのです。 この歯槽骨が失われることが、歯周病と歯肉炎を分ける最も重要なポイントと言えます。

  • 歯肉炎:
    • 歯茎の炎症のみ
    • 歯茎が赤く腫れる
    • 歯磨きで出血
    • 歯を支える骨は健康
  • 歯周病:
    • 歯茎と歯を支える骨に炎症が及ぶ
    • 歯茎が下がる
    • 歯がグラつく、抜ける
    • 口臭がきつくなる

つまり、歯肉炎は「治療すれば元通りになりやすい」状態ですが、歯周病になると「一度失われた歯を支える骨は元に戻りにくい」という、より深刻な病気なのです。

歯肉炎のサインを見逃さない!

歯肉炎は、いわばお口からの「SOS」です。歯磨きの際に歯茎から血が出る、歯茎が少し赤くなっている、といった小さな変化に気づくことが大切です。これらのサインは、歯肉炎の典型的な症状であり、放っておくと歯周病へと進行してしまう可能性があります。

歯肉炎の原因のほとんどは、プラークの除去不足です。プラークは、食べかすに細菌がくっついてできるネバネバしたものです。このプラークをしっかり取り除かないと、細菌が歯茎に炎症を起こさせてしまうのです。歯磨きを丁寧に行うことは、歯肉炎予防の第一歩と言えるでしょう。

  1. 歯磨きの回数と時間:
    1. 1日最低2回(朝と夜)
    2. 1回あたり3分以上かける
  2. 歯ブラシの選び方:
    • 毛先が柔らかいもの
    • ヘッドが小さめのもの
  3. 磨き方:
    • 歯と歯茎の境目を意識する
    • 小刻みに動かす

これらの基本的なケアを怠らず行うことで、歯肉炎を予防し、健康な歯茎を保つことができます。

歯周病の進行:静かに忍び寄る脅威

歯周病は、初期段階では自覚症状がほとんどないため、「静かに忍び寄る脅威」とも言われます。歯肉炎の段階では、多少の出血や腫れがあったとしても、「歯磨きの時に血が出やすい体質だから」などと軽く考えてしまう人も少なくありません。しかし、この間に歯周病は静かに進行し、歯を支える組織を破壊していきます。

進行した歯周病は、歯茎が大きく下がり、歯の根元が露出し、歯と歯の間に隙間ができる、歯がグラつくといった症状が現れます。さらに、口臭が強くなったり、膿が出たりすることもあります。これらの症状は、歯周病がかなり進行しているサインです。 歯周病が進行してしまうと、治療に時間も費用もかかりますし、最悪の場合、歯を抜かなければならなくなることもあります。

症状 歯肉炎 歯周病(進行期)
歯茎の腫れ あり あり(さらにひどくなることも)
出血 あり あり
歯茎の下がり なし あり
歯のグラつき なし あり
口臭 軽度(出血によるもの) 強くなる

歯周病は、全身の健康にも影響を与えることが分かっています。糖尿病や心臓病、脳卒中などとの関連も指摘されており、お口の中だけの問題ではないのです。

原因となるプラークと細菌

歯肉炎も歯周病も、その根本的な原因は「プラーク」です。プラークは、食べかすに細菌がくっついてできた、ネバネバした細菌の塊です。このプラークの中にいる細菌が、歯茎に炎症を起こさせたり、歯を支える骨を溶かしたりする物質を作り出します。

プラークは、歯の表面に付着し、歯磨きで取り除かない限り、どんどん溜まっていきます。特に、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目は、プラークが溜まりやすく、磨き残しも出やすい場所です。これらの場所を意識して丁寧に磨くことが、プラークコントロールの鍵となります。

  • プラークが溜まりやすい場所:
    • 歯と歯の間
    • 歯と歯茎の境目
    • 奥歯の裏側
    • 歯並びが悪い場所

また、プラークが長期間放置されると、唾液のミネラルと結合して硬くなり、「歯石」になります。歯石は、歯ブラシでは取り除くことができず、さらにプラークが付着しやすくなるため、歯周病を悪化させる原因となります。

治療法:歯肉炎と歯周病の処方箋

歯肉炎と歯周病の治療法は、病気の進行度によって大きく異なります。歯肉炎の場合は、比較的簡単な治療で改善することが多いです。

  1. 歯肉炎の治療:
    • 丁寧な歯磨き指導: 歯科衛生士による正しい歯磨きの方法の指導。
    • プラーク・歯石除去: 歯科医院での専門的なクリーニング。
    • 生活習慣の見直し: 喫煙や食生活の改善。

歯周病になると、治療はより専門的で長期的なものになります。歯茎の下まで進行したプラークや歯石を取り除く「歯周ポケット掻爬術(そうはじゅつ)」や、場合によっては外科的な手術が必要になることもあります。

重要なのは、早期発見・早期治療です。歯肉炎の段階で気づき、適切に対処することが、歯周病への進行を防ぐ最善の方法なのです。

予防策:健康な歯茎と歯周組織を守るために

歯肉炎や歯周病を予防するための最も基本的な方法は、毎日の丁寧なセルフケアです。これは、歯肉炎の段階でも、歯周病の治療後においても、生涯にわたって続けていくべきことです。

毎日の歯磨きはもちろんのこと、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間を清掃するための「デンタルフロス」や「歯間ブラシ」の使用も非常に効果的です。これらの補助的な清掃用具を正しく使うことで、プラークを効果的に除去し、病気の原因となる細菌の繁殖を抑えることができます。

  • 予防のためのケア:
    • 毎日の丁寧な歯磨き(朝・晩、各3分以上)
    • デンタルフロスや歯間ブラシの活用
    • 定期的な歯科健診(半年に一度が目安)
    • バランスの取れた食事
    • 禁煙(喫煙は歯周病のリスクを高めます)

また、歯科医院での定期的な健診は、自分では気づきにくい初期の歯肉炎や歯周病の兆候を発見するのに役立ちます。歯科衛生士による専門的なクリーニング(PMTC)も、プラークや歯石の除去に効果的です。

歯周病は、一度進行すると元に戻すのが難しい病気です。だからこそ、日頃からの予防が何よりも大切なのです。

「歯肉炎と歯周病の違い」を理解し、ご自身の歯とお口の健康を大切にすることは、全身の健康を守ることにも繋がります。今日からできることから、お口のケアを見直してみてはいかがでしょうか。

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