「横領」と「窃盗」、どちらも人のものを勝手に取ってしまう犯罪ですが、その性質には大きな違いがあります。この二つの違いを理解することは、法律を学ぶ上でも、社会生活を送る上でもとても大切です。今回は、この「横領 と 窃盗 の 違い」を、皆さんにわかりやすく説明していきますね。
犯行のきっかけ:預かっていたのか、いきなり奪ったのか
一番わかりやすい横領と窃盗の違いは、犯行のきっかけ、つまり、そのものがどのようにして犯人の手元に来たか、という点です。窃盗は、元々自分の支配下にないものを、こっそり持ち去ったり、だまし取ったりする行為です。例えば、お店で商品を万引きしたり、誰かの自転車を無断で持ち出したりするのが典型的な例です。
一方、横領は、もともと信頼されて預かっていたものを、自分のものにしてしまう行為です。例えば、会社の経理担当者が、預かっていた会社の売上金を、こっそり自分のために使ってしまったり、友達から預かったお金を返さずに使い込んでしまったりするのが横領にあたります。
まとめると、
- 窃盗: もともと自分の管理下になかったものを、勝手に自分のものにする。
- 横領: もともと預かっていたり、管理を任されていたりしたものを、勝手に自分のものにする。
という違いがあります。 この「預かっていたかどうか」という点が、横領と窃盗を区別する上で、最も重要なポイントと言えるでしょう。
関係性の違い:信頼関係の有無
横領と窃盗では、被害者との関係性にも違いが見られます。窃盗の場合、被害者と犯人の間に、特に特別な信頼関係があるとは限りません。見知らぬ人から物を盗むこともあれば、知り合いから盗むこともありますが、それはあくまで「物」を奪う行為であり、そこに「信頼」が介在しているわけではありません。
しかし、横領は、被害者との間に「信頼関係」があったことが前提となります。例えば、会社がお金を預けるのは、経理担当者を信頼しているからです。友達がお金を預けるのも、その友達を信頼しているからです。その信頼を裏切る形で、預かっていたものを自分のものにしてしまうのが横領なのです。
この信頼関係の有無は、罪の重さにも影響を与えることがあります。信頼を裏切る行為は、単に物を奪うこと以上に、人々の心に深い傷を残すからです。
行為の態様:隠れて取るか、管理下で取るか
犯行の具体的なやり方にも違いがあります。窃盗は、一般的に、被害者の見ていないところで、こっそりと物を取るというイメージが強いでしょう。これが「隠匿性」と言われるものです。
対して横領は、預かっていたり、管理を任されていたりする立場にあるため、必ずしも隠れて取る必要はありません。例えば、会社の経理担当者が、経費として処理するはずのお金を、実際には自分のために使ってしまう、といったケースもあります。これは、一見すると正当な取引のように見せかけることも可能であり、より巧妙な手口が使われることもあります。
| 犯罪名 | 行為の態様 |
|---|---|
| 窃盗 | 隠れて、またはだまして物を取る |
| 横領 | 預かっていたり、管理していたりするものを自分のものにする |
目的の違い:一時的な欲求か、計画的な利用か
横領と窃盗では、犯行の目的にも微妙な違いが見られることがあります。窃盗は、その場での一時的な欲求を満たすために行われることも少なくありません。例えば、空腹でパンを盗んでしまう、といったケースです。
一方、横領は、より計画的に、長期にわたって行われることもあります。預かっているお金を少しずつ自分のために使い込み、返済するつもりだったけれど、結局できなくなってしまった、といったケースなどが考えられます。これは、単なる衝動的な行為というよりは、ある程度の計画性や、自分を正当化しようとする心理が働く場合もあります。
法律上の位置づけ:刑法の条文
法律上、横領と窃盗は、刑法の中でそれぞれ異なる条文に定められています。窃盗罪は刑法235条に、横領罪は刑法252条に規定されています。これは、先ほど説明したように、両者が異なる性質を持つ犯罪であるためです。
条文が異なるということは、成立するための要件や、量刑(罪の重さ)にも違いがあるということです。一般的に、信頼を裏切る横領罪の方が、窃盗罪よりも重い罪とされる傾向があります。
具体例で比較:こんな時どっち?
ここで、いくつかの具体例を挙げて、横領と窃盗の違いをより明確にしてみましょう。
-
友達にお金を預かった後、返さずに自分のために使った。
これは、友達からの信頼を裏切って預かったお金を自分のものにしたので、「横領」にあたります。 -
お店のレジから、こっそりお金を盗んだ。
これは、お店の管理下にあったお金を、隠れて自分のものにしたので、「窃盗」にあたります。 -
会社の備品を、個人的な目的で無断で持ち出して使った。
会社の備品は会社のものであり、あなたが預かっていたわけではないので、これは「窃盗」にあたることが多いです。ただし、管理責任のある立場であれば「横領」になる可能性もあります。
まとめ:信頼関係が鍵!
いかがでしたか?「横領 と 窃盗 の 違い」について、基本的な部分から具体例まで、詳しく解説しました。一番のポイントは、「信頼関係」があったかどうか、そして「預かっていたもの」だったかどうか、という点です。この二つを覚えておけば、どちらの犯罪にあたるのか、判断しやすくなるはずです。