男性の健康を守る上で、前立腺に関する病気は避けて通れないテーマです。特に「前立腺肥大」と「前立腺がん」は、どちらも前立腺に起こる病気ですが、その性質や治療法は大きく異なります。 前立腺肥大と前立腺がんの違いを正しく理解することは、早期発見・早期治療につながるため非常に重要です。

前立腺肥大と前立腺がん、何が違うの?

前立腺は、男性特有の臓器で、膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲んでいます。この前立腺が大きくなるのが前立腺肥大症、そしてがん細胞が増殖するのが前立腺がんです。一見似ているように思えますが、両者は全く別の病気なのです。

前立腺肥大症は、加齢とともに起こりやすい「良性」の病気です。前立腺が大きくなることで尿道を圧迫し、頻尿や排尿困難といった症状を引き起こします。一方、前立腺がんは「悪性」の病気であり、がん細胞が進行すると他の臓器に転移する可能性もあります。

この違いを理解することが、適切な診断と治療への第一歩となります。

  • 前立腺肥大症: 良性の病気。加齢とともに起こりやすく、尿道を圧迫して症状が出る。
  • 前立腺がん: 悪性の病気。がん細胞が増殖し、進行すると転移の可能性も。
病気の種類 良性/悪性 主な原因 進行性
前立腺肥大症 良性 加齢 ゆっくり進行
前立腺がん 悪性 不明(遺伝、生活習慣などが関与) 進行する場合がある

前立腺肥大症のメカニズムと症状

前立腺肥大症は、男性ホルモンの影響や加齢によって、前立腺の細胞が過剰に増殖し、大きくなることで起こります。主に前立腺の内側、尿道に近い部分が大きくなるのが特徴です。これにより、尿道が圧迫されてしまい、様々な排尿トラブルを引き起こします。

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 頻尿(特に夜間)、残尿感
  2. 尿が出にくい、尿の勢いが弱い
  3. 排尿を我慢しても出にくい
  4. 尿が途切れ途切れになる

これらの症状は、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。しかし、前立腺肥大症はがんとは異なり、命に関わる病気ではありません。適切な治療を受ければ、症状を改善し、生活の質(QOL)を向上させることが可能です。

前立腺がんの進行と特徴

前立腺がんは、前立腺の細胞ががん化し、無秩序に増殖していく病気です。一般的に、前立腺の「外側」の部分に発生することが多いとされています。初期の前立腺がんは、自覚症状がないことがほとんどですが、進行すると症状が現れることがあります。

前立腺がんの進行は、がんの悪性度(グリソンスコアなど)や進行度(ステージ)によって異なります。早期であれば、手術や放射線治療で完治を目指すことも可能です。しかし、進行して骨などに転移してしまうと、治療が難しくなる場合もあります。

前立腺がんの進行に伴う主な症状としては、以下のようなものが考えられます。

  • 排尿困難、頻尿(特に夜間)
  • 血尿
  • 骨への転移による腰痛や背部痛

早期発見が非常に重要であるため、定期的な検診が推奨されます。

前立腺肥大と前立腺がんの症状の重なり

前立腺肥大症と前立腺がんの症状には、一部重なるものがあります。例えば、どちらも頻尿や排尿困難といった症状を引き起こすことがあります。このため、これらの症状がある場合に、どちらの病気であるかを自己判断することは非常に難しいのです。

例えば、頻尿という症状一つをとっても、前立腺肥大症の場合は大きくなった前立腺が膀胱を刺激するために起こることが多いですが、前立腺がんの場合、がんが膀胱に影響を与えたり、進行によって尿の流れが悪くなったりすることで起こることもあります。

このように、似た症状があるからといって、安易に「これは肥大症だろう」と決めつけるのは危険です。 正確な診断は、医師による専門的な検査によってのみ可能です。

症状 前立腺肥大症で起こりやすい 前立腺がんで起こりやすい
頻尿(夜間頻尿含む)
排尿困難、尿勢低下
残尿感
血尿 △(稀)
骨の痛み × ◎(転移した場合)

診断方法の違い

前立腺肥大症と前立腺がんの診断は、それぞれの病気の特徴に合わせて行われます。問診で症状を聞くことは共通していますが、その後の検査内容に違いが出てきます。

前立腺肥大症の診断では、一般的に以下のような検査が行われます。

  • 直腸診: 医師が指を直腸に入れ、前立腺の大きさや硬さを触診します。
  • PSA検査: 血液検査で、前立腺から分泌されるPSA(前立腺特異抗原)という物質の数値を調べます。
  • 超音波検査: お腹の上から、または経直腸的に超音波を当てて前立腺の大きさを測定します。

一方、前立腺がんの診断では、PSA検査が非常に重要な役割を果たします。PSA値が高い場合、がんの可能性が疑われます。さらに、より詳しく調べるために、以下のような検査が行われます。

  1. 針生検: 超音波で前立腺を画像で見ながら、疑わしい部分から組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べます。
  2. MRI検査: 前立腺の内部を詳しく調べることで、がんの広がりや位置を把握します。

PSA検査は、前立腺肥大症でも数値が上昇することがあるため、PSA値が高いからといってすぐにがんとは断定できません。 医師はこれらの検査結果を総合的に判断して、正確な診断を行います。

治療法の違い

前立腺肥大症と前立腺がんでは、病気の性質が異なるため、治療法も大きく異なります。前立腺肥大症の治療は、症状の程度によって薬物療法や手術療法があります。

前立腺肥大症の治療法:

  • 薬物療法: 前立腺を小さくしたり、尿道の緊張を和らげたりする薬を使います。
  • 手術療法: 内視鏡を使って、大きくなった前立腺の一部を削り取る手術(経尿道的前立腺切除術など)が一般的です。

一方、前立腺がんの治療は、がんの進行度、悪性度、患者さんの年齢や健康状態などを考慮して決定されます。早期であれば、根治を目指す治療が行われます。

前立腺がんの主な治療法:

  1. 手術療法: 前立腺をすべて摘出する手術(前立腺全摘除術)があります。
  2. 放射線治療: 放射線を前立腺に照射してがん細胞を死滅させます。
  3. 薬物療法: ホルモン療法や化学療法などがあります。進行した場合や、手術・放射線治療が難しい場合に行われます。

ご自身の病状に合った最適な治療法については、必ず医師とよく相談してください。

まとめ:早期発見・早期対応が鍵

前立腺肥大症と前立腺がんは、どちらも前立腺に関わる病気ですが、その原因、性質、そして治療法は全く異なります。前立腺肥大症は加齢に伴う良性の病気ですが、前立腺がんは悪性の病気であり、早期発見・早期治療が非常に重要です。

排尿に関する気になる症状がある場合は、自己判断せずに、まずは泌尿器科を受診しましょう。医師による適切な診断と、ご自身の健康状態に合った治療を受けることが、将来の健康を守るために最も大切です。

前立腺の健康について、正しい知識を持ち、定期的な検診を受ける習慣をつけましょう。

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