「咽頭 癌(いんとう がん)」と「喉頭 癌(こうとう がん)」は、どちらも首の奥にあるがんですが、その発生場所や特徴、そして治療法には違いがあります。この二つの癌の基本的な違いを理解することは、病気の早期発見や適切な治療を受ける上で非常に重要です。ここでは、咽頭 癌 と 喉頭 癌 の違いについて、分かりやすく解説していきます。
発生場所と構造の違い
まず、咽頭と喉頭がどこにあるのか、そしてどのように違うのかを見ていきましょう。咽頭は、鼻の奥から食道につながる部分までの通り道で、食べ物や空気が通る場所です。喉頭は、この咽頭の下の方にあり、声帯がある「声の出し口」とも言える部分です。この発生場所の違いが、それぞれの癌の症状や性質に影響を与えます。
具体的に見ていくと、咽頭はさらに上から「鼻咽頭(びいんとう)」、「中咽頭(ちゅういんとう)」、「下咽頭(かいんとう)」の3つの部分に分かれています。一方、喉頭は声帯を含む「声門(せいもん)上部」、「声門部」、「声門下部」に分けられます。 これらの場所の違いを把握することが、咽頭癌と喉頭癌の違いを理解する第一歩となります。
- 咽頭:鼻の奥から食道への通り道
- 喉頭:声帯がある、声の出し口
これらの部位によって、癌が発生した際に現れる症状や、周囲の組織への影響も変わってきます。例えば、声帯に近い場所で癌が発生すると、声の変化が早く現れる傾向があります。
咽頭癌の主な特徴
咽頭癌は、発生する咽頭の部位によってさらに細かく分類されます。それぞれの部位によって、癌の発生原因や症状の現れ方が異なることがあります。
鼻咽頭癌
鼻咽頭癌は、発生頻度はそれほど高くありませんが、特にアジア圏で比較的多く見られます。EBウイルス(伝染性単核球症の原因にもなるウイルス)との関連が指摘されており、他の咽頭癌とは少し異なる特徴を持っています。初期症状としては、鼻づまりや鼻血、耳の閉塞感、首のリンパ節の腫れなどが挙げられます。
- 鼻づまり、鼻血
- 耳の閉塞感、聞こえにくさ
- 首のリンパ節の腫れ
中咽頭癌
中咽頭癌は、扁桃腺(へんとうせん)や舌の付け根(舌根部:ぜっこんぶ)にできやすい癌です。近年、特に若年層の間で増加傾向にあり、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因の一つとして注目されています。症状としては、喉の痛みや違和感、飲み込みにくさ、首のリンパ節の腫れなどが現れます。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 喉の痛み・違和感 | 食べ物や飲み物を飲み込むときに痛むことがある。 |
| 飲み込みにくさ | 食べ物が通りにくく感じる。 |
| 首のリンパ節の腫れ | 首にしこりができることがある。 |
下咽頭癌
下咽頭癌は、食道や喉頭に近い部分に発生します。高齢者、特に男性に多く、喫煙や飲酒との関連が非常に強い癌です。初期の段階では症状が出にくいため、発見が遅れることもあります。進行すると、喉の痛み、飲み込みにくさ、声のかすれ、体重減少などの症状が現れることがあります。
咽頭癌の主な原因とリスク因子
咽頭癌の主な原因としては、喫煙と過度の飲酒が挙げられます。これらの生活習慣は、咽頭の粘膜を傷つけ、癌の発生リスクを高めます。また、最近ではHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が、中咽頭癌の重要な原因として注目されています。HPVは性交渉によって感染するウイルスで、特にオーラルセックスがリスクを高めると考えられています。
- 喫煙
- 過度の飲酒
- HPV(ヒトパピローマウイルス)感染
これらのリスク因子に複数当てはまる場合、癌の発生リスクはさらに高まります。定期的な健康診断や、気になる症状がある場合は早期に医療機関を受診することが大切です。
喉頭癌の主な特徴
喉頭癌は、声帯がある喉頭に発生する癌です。声帯のどの部分に癌ができるかによって、症状の現れ方や治療法が異なります。
声門癌
喉頭癌の中で最も多いのが声門癌で、全体の約6割を占めます。声帯そのものに発生するため、初期から声のかすれが主な症状として現れます。声のかすれは、風邪などの病気でも起こり得ますが、2週間以上続く場合は専門医の診察を受けることが重要です。治療としては、放射線療法や手術が選択されます。
声門癌の初期症状は、以下のようなものがあります。
- 声のかすれ(嗄声:させい)
- 声の出しにくさ
声門上部癌
声帯の上側(喉頭蓋:こうとうがいなど)にできる癌です。初期には喉の違和感や異物感、飲み込みにくさなどが現れることがありますが、声のかすれは比較的遅れて現れることが多いです。そのため、発見が遅れるケースもあります。
声門下部癌
声帯の下側(気管に近い部分)にできる癌です。発生頻度は低く、初期症状もはっきりしないことが多いです。進行すると、呼吸をしにくくなったり、痰に血が混じったりすることがあります。
喉頭癌の主な原因とリスク因子
喉頭癌の主な原因も、咽頭癌と同様に喫煙と過度の飲酒が非常に大きな要因となります。これらの習慣は、喉頭の粘膜を傷つけ、癌の発生リスクを大幅に高めます。特に、喫煙と飲酒の両方を行っている人は、リスクがさらに高まることが知られています。
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 喫煙 | タバコの煙に含まれる有害物質が粘膜を傷つける。 |
| 過度の飲酒 | アルコールが粘膜を刺激し、発がん物質の作用を強める。 |
これらのリスク因子に注意し、禁煙や節酒を心がけることが、喉頭癌の予防につながります。
治療法と予後の違い
咽頭癌と喉頭癌の治療法は、癌の種類、進行度、患者さんの全身状態などによって総合的に判断されます。しかし、発生場所の違いから、治療の選択肢や予後(病気の経過や見込み)に違いが見られることもあります。
一般的に、初期の癌であれば手術や放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)などを組み合わせて治療が行われます。喉頭癌、特に声門癌は、初期であれば声帯温存手術が可能な場合も多く、声の機能をできるだけ残す治療が目指されます。一方、進行した癌や、声帯の機能に影響が大きい癌の場合は、喉頭全摘出術が必要になることもあります。
咽頭癌の場合も、発生部位や進行度によって治療法は異なります。HPV関連の中咽頭癌は、放射線療法や化学療法の効果が高い場合があり、声帯温存手術が可能なケースもあります。しかし、下咽頭癌などで進行が早い場合は、食道や喉頭の一部を切除する手術が必要になることもあります。
- 早期発見 が予後を大きく左右します。
- 喉頭癌、特に声門癌は 声帯温存 を目指せる場合があります。
- HPV関連中咽頭癌は 化学療法・放射線療法の効果 が期待できることがあります。
いずれの癌も、早期に発見し、適切な治療を受けることが、良好な予後につながる鍵となります。
まとめ
咽頭癌と喉頭癌は、どちらも首にできる癌ですが、発生する場所が異なり、それに伴って症状や原因、治療法、そして予後にも違いがあります。両方の癌に共通して、喫煙や飲酒は大きなリスク因子です。特に、喉の痛みや声のかすれ、飲み込みにくさなど、気になる症状が続く場合は、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療が、病気を乗り越えるために最も重要であることを忘れないでください。