「月収」と「手取り」って、どっちも毎月のお給料のことだと思っている人もいるかもしれません。でも、この二つには実は大きな違いがあります。 月収と手取りの違いをしっかり理解することは、自分のお金がどう使われているのかを知り、将来のために賢く貯蓄や投資をする上でとても大切なんです。
月収って、いったい何?
まず、月収とは、会社から提示されている「額面給与」のことです。これは、税金や社会保険料などが引かれる前の、いわば「これがあなたの本来の給料ですよ」という金額になります。残業代や各種手当などもすべて含んだ、一番大きい金額ですね。
たとえば、求人情報に「月収30万円」と書かれていたら、それは税金などが引かれる前の金額なのです。この月収から、後で説明する「控除」といわれるものが差し引かれて、実際に銀行口座に振り込まれる金額が決まります。
月収には、基本給に加えて、以下のようなものが含まれます。
- 基本給
- 残業手当
- 深夜手当
- 休日出勤手当
- 役職手当
- 通勤手当(非課税限度額を超えた場合)
手取りって、どうやって決まるの?
次に、手取りについて説明しましょう。手取りとは、月収から税金や社会保険料などを差し引いた、実際に自分の銀行口座に振り込まれる「使えるお金」のことです。これが、毎月生活していく上で一番関係の深い金額になります。
手取り額は、月収から以下のものが差し引かれて計算されます。この差し引かれるものを「控除」と呼びます。
| 控除項目 | 内容 |
| 所得税 | 給料から天引きされる税金。所得が多いほど高くなります。 |
| 住民税 | 住んでいる自治体に納める税金。前年の所得に対してかかります。 |
| 社会保険料 | 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上)など。 |
「え、こんなに引かれるの?」と思うかもしれませんが、これらはすべて、私たちが安心して生活するために必要なものです。たとえば、病気やケガをしたときに助かる健康保険や、将来もらう年金、失業したときに助かる雇用保険など、社会保険料は私たちの生活を支える大切な役割を担っています。
手取り額は、一般的に月収の75%〜85%程度になると言われています。これはあくまで目安で、家族構成や扶養家族の有無、住んでいる地域によっても変わってきます。
控除の種類をもっと詳しく見てみよう
「控除」は、月収から引かれるものをまとめて呼ぶ言葉ですが、それぞれにもう少し詳しい内容があります。これを理解すると、なぜ手取りが月収より少なくなるのかがさらに分かります。
まず、税金についてです。
- 所得税 :これは、1年間の所得(収入から経費などを引いたもの)にかかる税金です。給料から毎月天引きされますが、年末調整で最終的な税額が決まります。
- 住民税 :これは、住んでいる市区町村に納める税金です。前年の所得に対して、その年の6月から翌年5月にかけて分割で納めます。
次に、社会保険料です。
- 健康保険料 :病気やケガをしたときの医療費を保障してくれる健康保険に加入するための保険料です。
- 厚生年金保険料 :将来、年金を受け取るために加入する厚生年金保険の保険料です。
- 雇用保険料 :働いている人が、万が一失業した場合に生活を支えるための保険料です。
- 介護保険料 :40歳以上になると、介護サービスを受けるための介護保険料もかかります。
これらの控除額は、個人の状況によって異なります。例えば、扶養家族がいる場合は、所得税や住民税の計算で「配偶者控除」や「扶養控除」が適用され、税金が安くなることがあります。
賢いお金の使い方の第一歩:手取り額を把握すること
「月収」はあくまで「総支給額」であり、「手取り」が実際に使えるお金だということを理解するのは、お金の管理の基本中の基本です。まずは、自分の手取り額を正確に把握することから始めましょう。
給与明細をよく見ると、月収、そしてそこから引かれる控除項目と金額がすべて記載されています。
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給与明細の確認ポイント
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- 総支給額(これが月収です)
- 各種控除額(所得税、住民税、社会保険料など)
- 差引支給額(これが手取り額です)
手取り額が分かったら、それを元に毎月の予算を立ててみましょう。食費、住居費、水道光熱費、通信費、娯楽費など、何にいくら使うのかを計画することで、無駄遣いを減らすことができます。
もし、毎月貯蓄や投資に回したい金額があるなら、手取り額からそれを先に確保してしまう「先取り貯金」という方法もおすすめです。先に貯蓄分を別の口座に移してしまうことで、使い込みを防ぐことができます。
所得税の仕組みを知る
所得税は、所得が多いほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。これは、所得の低い人には負担を少なく、所得の高い人にはより多くの税金を負担してもらうという考え方に基づいています。
所得税の計算は少し複雑ですが、大まかには以下のようになります。
- 収入金額 :1年間の給料などの総額
- 給与所得控除 :収入金額に応じて定められている、仕事にかかった経費のようなもの
- 所得金額 :収入金額から給与所得控除を引いたもの
- 所得控除 :扶養家族の数や社会保険料の支払い額など、個人の事情に応じて所得から差し引けるもの
- 課税所得金額 :所得金額から所得控除を引いたもの。この金額に税率がかかります。
- 所得税額 :課税所得金額に税率をかけて計算されます。
年末調整や確定申告では、この所得税額が最終的に確定されます。
住民税の決まり方
住民税は、住んでいる地域に納める税金で、所得税とは計算方法が少し異なります。住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課税されます。
住民税の計算は、大きく分けて「均等割」と「所得割」の二つから成り立っています。
- 均等割 :所得にかかわらず、一定額(例:市区町村民税3,500円、都道府県民税1,500円など)が課税されます。
- 所得割 :前年の所得金額から所得控除を差し引いた「課税所得金額」に、税率(一般的に10%)をかけて計算されます。
住民税は、所得税と異なり、所得が少なくても一定額は課税されるため、収入が少ない方でも支払う必要があります。
社会保険料の計算方法
社会保険料は、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、複数の項目がありますが、その計算の元になるのは「標準報酬月額」というものです。これは、毎月のお給料(月収)を区切りの良い幅で区分したもので、標準報酬月額によって保険料が決まります。
標準報酬月額は、年に一度(通常は4月)の定時決定や、給与体系の変更があった場合などに改定されます。この標準報酬月額に、それぞれの保険料率をかけて保険料が計算されます。
例えば、健康保険料率は、加入している健康保険組合によって異なります。厚生年金保険料率は全国一律で、保険料は会社と被保険者(従業員)が半分ずつ負担します。
手取りを増やすためのヒント
手取り額を増やすためには、いくつかの方法が考えられます。ただし、合法的な範囲で行うことが大切です。
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控除を最大限に活用する
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- iDeCo(個人型確定拠出年金) :掛金が全額所得控除の対象になるため、所得税や住民税が軽減されます。
- ふるさと納税 :寄付した金額のうち、2,000円を超える部分が、所得税や住民税から控除されます。
- 医療費控除 :1年間の医療費が一定額を超えた場合、控除を受けることができます。
- 生命保険料控除 :生命保険や医療保険などの保険料を支払っている場合、一定額が控除されます。
- 残業代や手当を正しく認識する :月収に含まれる残業代や各種手当を正確に把握し、もし計算に誤りがあれば会社に確認することも大切です。
- 扶養家族を有効活用する :配偶者控除や扶養控除など、家族構成に応じた控除を正しく申告することで、税負担を軽減できます。
これらの控除を活用することで、税金や社会保険料の負担を減らし、結果として手取り額を増やすことが期待できます。
月収と手取りの違いを理解することは、単に「いくらもらえるか」を知るだけでなく、自分のお金がどのように社会に還元され、またどのように税金や保険料として徴収されているのかを知る良い機会です。この知識を活かして、無理のない範囲で賢くお金を管理し、将来の計画を立てていきましょう。