心臓の病気、特に「心筋梗塞」と「狭心症」は、どちらも心臓の血管(冠動脈)に問題が起きる病気ですが、その深刻さや心電図での現れ方には違いがあります。この違いを理解することは、自分の心臓のSOSサインに気づくためにとても大切です。今回は、「心筋梗塞と狭心症の違い心電図」に焦点を当て、それぞれの特徴と、心電図がどのようにこれらの病気を教えてくれるのかを分かりやすく解説していきます。
心臓のSOS!心筋梗塞と狭心症の基本的な違い
心臓は、全身に血液を送るポンプのような役割をしていますが、その心臓自身も筋肉でできており、活動するためには酸素と栄養が必要です。これらを供給しているのが、心臓の表面を走っている「冠動脈」という血管です。狭心症と心筋梗塞は、この冠動脈が細くなったり、詰まったりすることで起こります。心筋梗塞は、血管が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉の一部が壊れてしまう、より危険な状態です。一方、狭心症は、血管が一時的に狭くなることで、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなり、胸の痛みなどの症状が出ますが、心臓の筋肉が壊れるわけではありません。 この「心臓の筋肉が壊れるかどうか」が、心筋梗塞と狭心症の最も重要な違いであり、心電図にもはっきりと現れます。
- 狭心症: 冠動脈が一時的に狭くなる(虚血)。
- 心筋梗塞: 冠動脈が完全に詰まる。心臓の筋肉に血液が届かなくなり、筋肉が壊死する。
心電図は、心臓の電気的な活動を記録する検査です。心臓が動くときには、微弱な電気が発生します。この電気信号の流れ方をグラフにしたものが心電図です。病気によって電気信号の伝わり方が変わるため、心電図を見ることで、心臓の状態を知ることができます。
| 症状 | 原因 | 心電図の変化 |
|---|---|---|
| 胸の痛み、圧迫感(運動時や精神的ストレスで起こりやすい) | 冠動脈が一時的に狭くなる | ST部分の低下など(一時的な変化) |
| 激しい胸の痛み、冷や汗、吐き気など(安静時にも起こる) | 冠動脈が完全に詰まる | ST部分の上昇、異常Q波など(持続的な変化) |
心電図で見る「虚血」のサイン
「虚血(きょけつ)」とは、体の組織に十分な血液が供給されない状態のことです。狭心症では、心臓の筋肉が一時的に虚血状態になります。この虚血状態は、心電図に特徴的な変化として現れます。
具体的には、心電図の「ST部分」という部分の形が変わることが多いです。狭心症の場合、このST部分が通常よりも下に下がって見える(ST低下)ことがあります。これは、心臓の筋肉に酸素が足りていないことを示唆するサインです。しかし、狭心症のST低下は、症状が改善すると元に戻ることがほとんどです。
- ST部分の低下: 心臓の筋肉が酸素不足であることを示します。
- T波の異常: T波という波形が平坦になったり、逆さまになったりすることもあります。
- 症状との関連: これらの変化は、胸の痛みなどの症状が出ているときに現れることが多いです。
心電図の検査は、症状が出ているときに撮るのが一番分かりやすいのですが、症状が治まると心電図も正常に戻ってしまうこともあります。そのため、症状が頻繁に起こる場合は、日頃から心電図を記録しておくことも重要になります。
心電図で見る「心筋梗塞」の決定的サイン
心筋梗塞は、心臓の筋肉が壊死してしまう病気なので、心電図にもより深刻で持続的な変化が現れます。狭心症のST低下よりも、さらに特徴的な変化が見られるのが心筋梗塞です。
心筋梗塞で最も特徴的な心電図の変化は、「ST部分の上昇」です。これは、心臓の筋肉が壊死し始めている、あるいは壊死していることを強く疑わせるサインです。このST上昇は、血管が詰まってからの時間とともに進行し、時間とともに「異常Q波」という、通常は存在しないはずの大きな波形が現れることもあります。異常Q波は、心臓の筋肉が壊死してしまったことを示す、いわば「傷跡」のようなものです。
- ST部分の上昇: 急性心筋梗塞の典型的なサインです。
- 異常Q波の出現: 心筋が壊死したことを示します。
- T波の増高: 初期の心筋梗塞で、T波が急に高くなることもあります。
心筋梗塞の場合、心電図の変化は、症状が治まった後も長く残ることが特徴です。そのため、過去に心筋梗塞を起こしたことがあるかどうかも、心電図で判断できることがあります。心筋梗塞は、一刻も早い治療が必要な病気ですから、心電図での迅速な判断が命を救う鍵となります。
心電図の波形から読み取る:ST部分の変化
心電図の波形を構成する要素はいくつかありますが、心筋梗塞や狭心症の診断において特に注目されるのが「ST部分」です。このST部分のわずかな変化が、心臓の命運を分けることもあります。
正常な心電図では、ST部分は基線(平らな線)と同じ高さか、わずかに高い程度です。しかし、心臓の筋肉に血流が不足すると、このST部分が低下したり、逆に上昇したりします。狭心症では、主にST部分の低下が見られ、これは一時的な酸素不足を示唆します。一方、急性心筋梗塞では、ST部分が顕著に上昇することが多く、これは心臓の筋肉が壊死し始めている、つまり「心臓発作」が起きている可能性が高いことを示します。
- ST低下: 虚血(血流不足)のサイン。狭心症でよく見られる。
- ST上昇: 心筋梗塞の強力なサイン。
- 基線からのずれ: ST部分が基線からどれくらいずれているかが重要。
心電図は、これらのST部分の変化を正確に捉えることで、心臓に何が起きているのかを医師に伝えます。だからこそ、胸の痛みなどの症状があったら、すぐに心電図検査を受けることが大切なのです。
心電図と不整脈:心臓のリズムの乱れ
心筋梗塞や狭心症は、心臓の血管の問題ですが、それによって心臓のリズムが乱れる「不整脈」が起こることもあります。心電図は、こうした不整脈も捉えることができます。
心臓は、洞結節という場所から発生する電気信号によって、一定のリズムで収縮しています。しかし、心臓の筋肉がダメージを受けたり、血流が悪くなったりすると、この電気信号の発生や伝わりに異常が生じ、不整脈を引き起こします。例えば、脈が速すぎたり、遅すぎたり、あるいは不規則になったりします。
- 頻脈: 脈が速くなる。
- 徐脈: 脈が遅くなる。
- 心房細動: 心臓の上部(心房)が細かく震えるように不規則に収縮する。
不整脈自体が症状を引き起こすこともありますが、心筋梗塞や狭心症の合併症として、あるいはその前兆として現れることもあります。心電図で不整脈が見つかった場合、それが心臓の病気と関係しているかどうかを詳しく調べる必要があります。
心電図による迅速診断の重要性
心筋梗塞や重症の狭心症は、時間との勝負です。一刻も早く治療を開始することが、心臓のダメージを最小限に抑え、命を救うために不可欠です。
心電図は、その迅速な診断において非常に重要な役割を果たします。救急外来などで、胸の痛みなどを訴える患者さんが来られた場合、すぐに心電図検査が行われます。心電図の結果を見て、ST部分の上昇など、心筋梗塞を強く疑う所見があれば、直ちにカテーテル治療などの専門的な治療へと移行することができます。
- 迅速な発見: 心電図は、数分で結果が得られる。
- 治療方針の決定: 所見に基づいて、緊急治療が必要かどうかの判断ができる。
- 予後の改善: 早期治療は、心臓の機能維持や生存率の向上につながる。
つまり、心電図は、心臓のSOSサインをいち早くキャッチし、適切な治療への道を開く「命綱」とも言える検査なのです。
心電図検査を受けるタイミングと注意点
「心筋梗塞と狭心症の違い心電図」を理解した上で、どのような時に心電図検査を受けるべきか、そして検査を受ける上での注意点を知っておくことも大切です。
最も重要なのは、胸の痛み、圧迫感、締め付けられるような感じ、冷や汗、息切れといった、心臓の病気を疑わせる症状が出たときに、すぐに医療機関を受診することです。特に、これらの症状が安静にしても治まらない場合や、運動時、ストレスを感じたときに頻繁に起こる場合は、迷わず医師に相談しましょう。また、過去に心臓病の経験がある方や、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスクファクターがある方も、定期的な健康診断で心電図検査を受けることが推奨されます。
- 症状があるとき: 胸痛、圧迫感、息切れなど。
- リスクファクターがある場合: 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴など。
- 定期健診: 自覚症状がなくても、定期的に検査を受けることが大切。
心電図検査自体は、体に負担のかからない安全な検査です。電極を胸や手足につけるだけなので、痛みもありません。ただし、検査中に動いたり、話したりすると、正確な波形が記録できないことがあります。検査中はリラックスして、動かないように注意しましょう。
まとめ:心電図は心臓の声を聞くための重要なツール
心筋梗塞と狭心症は、どちらも心臓の血管の病気であり、心電図はこの二つを区別し、病状の重さや緊急性を判断するための非常に重要な検査です。心電図に現れるST部分の変化(低下や上昇)、異常Q波の出現などは、心臓の筋肉がSOSを発しているサインと言えます。
心電図は、単に病気を見つけるだけでなく、その後の治療方針を決定し、命を救うための迅速な判断を助ける、まさに「心臓の声を聞くための重要なツール」なのです。胸の痛みなどの症状を感じたら、ためらわずに医療機関を受診し、心電図検査を受けて、自分の心臓の健康を守りましょう。