「既往歴(きおうれき)」と「既往症(きおうしょう)」という言葉、医療機関で問診を受ける際などに耳にする機会があるかもしれません。これらの言葉は似ているようで、実は意味するところが異なります。今回は、 既往歴と既往症の違い を分かりやすく解説し、それぞれの重要性について掘り下げていきましょう。

「既往歴」と「既往症」の言葉の定義と範囲

まず、それぞれの言葉の基本的な意味から見ていきましょう。既往歴とは、過去にかかった病気や怪我、受けた手術、現在治療中の病気、さらにはアレルギーや予防接種の履歴まで、健康状態に関する過去のすべての情報を指します。これは、個人の「病気の履歴書」のようなものと言えるでしょう。

一方、既往症とは、過去にかかった病気そのものを指します。つまり、既往歴という広い枠組みの中に、具体的な病名である既往症が含まれている、という関係性になります。例えば、「高血圧」は既往症ですが、「高血圧の治療のために降圧剤を服用している」といった情報は既往歴に含まれます。

この違いを理解することは、ご自身の健康状態を正確に医療従事者に伝える上で非常に重要です。 既往歴を正確に伝えることで、医師はより適切な診断や治療方針を立てることができます。以下に、それぞれの構成要素をまとめてみました。

  • 既往歴に含まれるもの
    • 過去にかかった病気(例:肺炎、胃潰瘍)
    • 過去の怪我(例:骨折、捻挫)
    • 受けた手術(例: appendectomy(虫垂切除術))
    • 現在治療中の病気(例:糖尿病、喘息)
    • アレルギー(例:花粉症、食物アレルギー)
    • 予防接種の履歴
    • 妊娠・出産歴(女性の場合)

既往歴を詳しく知るメリット

既往歴を把握しておくことには、様々なメリットがあります。まず、ご自身の健康状態を客観的に理解する助けになります。過去にどのような病気を経験し、どのように回復したのかを知ることで、将来の健康管理に役立てることができます。

また、新しい病気にかかった際に、医師に正確な情報を伝えることができます。例えば、過去に心臓病を患ったことがある場合、新しい薬を処方される際に、その薬が心臓に影響を与えるかどうかを医師が判断するのに役立ちます。これは、医療ミスを防ぐためにも不可欠な情報です。

さらに、人間ドックや健康診断の結果と照らし合わせることで、過去からの体の変化や、現在進行中のリスクを把握しやすくなります。 既往歴は、未来の健康を築くための羅針盤となるのです。

  1. 既往歴の整理方法
    1. 病名、病気にかかった時期、治療内容、現在の状態を記録する。
    2. 手術を受けた場合は、手術名と時期を記録する。
    3. アレルギーがある場合は、アレルゲンと症状を具体的に記録する。

既往症の具体的な例とその影響

既往症は、その病名によって現在の健康状態に様々な影響を与える可能性があります。例えば、過去に糖尿病を患ったことがある人は、将来的に心臓病や腎臓病のリスクが高まることが知られています。そのため、定期的な健康チェックや生活習慣の見直しが重要になります。

また、喘息の既往症がある人は、特定の環境(寒さやホコリなど)で発作が起きやすくなることがあります。これは、日頃から注意して環境を整えることで、発作の予防につながります。

過去の怪我や手術も、既往症として考慮されます。例えば、過去に大きな骨折をしたことがある場合、その部位に負担のかかる運動をする際に注意が必要です。 既往症の情報を知ることは、リスク管理に繋がります。

既往症の例 考えられる影響
高血圧 脳卒中、心筋梗塞のリスク増加
アレルギー性鼻炎 鼻詰まり、くしゃみ、集中力の低下
腰椎椎間板ヘルニア 腰痛、足のしびれ、歩行困難

既往歴と既往症の関連性:より深い理解のために

既往歴と既往症は密接に関連しています。既往症とは、個々の病名のこと。そして既往歴とは、その病気にかかった時期、治療法、現在の病状、さらにはその病気に関連する合併症や後遺症といった、より広範な情報を含みます。

例えば、「胃潰瘍」という既往症がある場合、既往歴としては「いつ胃潰瘍になったのか」「どのような治療を受けたのか(手術したのか、薬で治したのか)」「現在、胃の調子に問題はないのか」「潰瘍が原因で合併症(例:出血)はなかったか」といった情報が重要になってきます。

この「情報」の幅広さが、既往歴の重要性を示しています。

以下に、既往歴を具体的に把握しておくことの重要性をまとめました。

  • 病気の進行状況や再発リスクの評価
  • 治療法の選択肢の検討
  • 合併症や後遺症の有無の確認
  • 将来的な健康リスクの予測

医療現場での「既往歴」の重要性

医療現場において、既往歴は医師にとって非常に重要な情報源となります。患者さんの過去の病歴を知ることで、現在の症状の原因を特定しやすくなったり、将来起こりうる健康問題のリスクを予測したりすることができます。

例えば、ある薬を処方する際に、過去にその薬でアレルギー反応を起こしたことがあれば、別の薬に変更する必要があります。また、心臓病の既往症がある患者さんに、心臓に負担のかかる手術を行う場合は、より慎重な準備と管理が必要になります。

正確な既往歴の把握は、安全で効果的な医療を提供する上で不可欠です。

問診票に正確に記入したり、医師にしっかりと伝えるように心がけましょう。もし、ご自身の既往歴を正確に覚えていない場合は、かかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。

  1. 問診票記入時のポイント
    1. 正直かつ正確に記入する。
    2. 曖昧な場合は、医師に質問する。
    3. 不明な点は、家族に確認する。

「既往症」が現在の治療に与える影響

既往症は、現在の治療に直接的な影響を与えることがあります。例えば、過去に腎臓病を患ったことがある人は、腎臓に負担をかける可能性のある薬の投与量に注意が必要です。また、アレルギー体質の人は、使用する薬剤の種類に制限がある場合があります。

さらに、既往症があることで、特定の病気にかかりやすくなったり、病状が悪化しやすくなったりすることもあります。そのため、医師は患者さんの既往症を考慮して、より個別化された治療計画を立てます。 既往症は、未来の健康への「ヒント」となるのです。

既往歴の記録と管理の重要性

ご自身の既往歴を記録し、管理することは、健康管理の基本です。記録しておくことで、いざという時に慌てずに済みますし、医療機関を受診する際にもスムーズに情報を伝えられます。最近では、スマートフォンのアプリなどで健康記録をつけられるものもあります。

  • 記録しておくと便利な項目
    • 病名、診断日、治療内容
    • 手術歴(手術名、時期)
    • アレルギー情報
    • 現在服用中の薬
    • 健康診断の結果

既往歴の正確な管理は、ご自身の健康に対する責任感とも言えます。

病気になった時だけでなく、健康な時にも定期的に見直し、最新の状態にしておくことが大切です。

まとめ:既往歴と既往症を理解して、より良い健康管理を

ここまで、既往歴と既往症の違いについて詳しく見てきました。既往歴は過去の健康に関するあらゆる情報、既往症はその中でも具体的な病名そのものを指します。この二つの言葉の正確な意味を理解し、ご自身の健康状態を正確に把握することは、より良い健康管理と、医療機関でのスムーズな受診に繋がります。

既往歴と既往症の違いを理解することは、ご自身の健康を守るための第一歩です。 ぜひ、ご自身の健康記録を見返したり、かかりつけ医に相談したりして、健康管理に役立ててください。

Related Articles: