「年金収入」と「年金所得」、この二つの言葉、似ているようで実は意味が違います。年金を受け取る上で、この 年金収入 と 年金所得 の 違い を正しく理解しておくことは、将来の生活設計を考える上でとても大切なのです。今回は、この違いを分かりやすく解説していきますね。
年金収入の基本:まるっと入ってくるお金
まず、「年金収入」というのは、文字通り、あなたが年金として受け取る「総額」のことです。例えば、毎月10万円の年金を受け取るとしたら、その10万円すべてが年金収入となります。これは、税金などが引かれる前の、まさに「入ってくるお金」の総量と考えてください。年金の種類(国民年金、厚生年金、企業年金など)に関わらず、受け取る金額そのものを指します。
年金収入を把握することは、あなたの生活費を計画する上で最初のステップになります。具体的には、以下のようなものを含みます。
- 国民年金
- 厚生年金
- 企業年金(確定給付年金、確定拠出年金など)
- 個人年金保険
この年金収入の総額を知ることで、「毎月いくら自由に使えるお金があるのか」という目安が立てやすくなります。しかし、ここで注意したいのが、これがそのまま手元に残るお金ではないということです。
年金所得の正体:税金計算の基準になるお金
次に、「年金所得」ですが、こちらは年金収入から「必要経費」を差し引いた「利益」の部分を指します。年金を受け取るためには、保険料を納めたり、受け取るための手続きをしたりと、様々な費用がかかっています。また、年金所得は所得税の計算に使われるため、単なる収入総額ではなく、税法上の「所得」として扱われるのです。
年金所得を計算する際の「必要経費」は、法律で定められており、年金の種類や受け取る人の年齢などによって異なります。これを「公的年金等控除」といいます。例えば、公的年金等の収入が一定額以下の場合、その収入額の一定割合を必要経費とみなすことができます。この控除額が大きいため、年金所得は年金収入よりも少なくなるのが一般的です。
年金所得が重要になるのは、主に以下のような場面です。
| 場面 | 説明 |
|---|---|
| 所得税の計算 | 年金所得に所得税率がかかります。 |
| 住民税の計算 | 年金所得に住民税率がかかります。 |
| 他の所得との合算 | パート収入など、他の所得と合算して税額が決まることがあります。 |
つまり、年金所得は、あなたの「税金を計算するための元となる金額」なのです。
公的年金等控除とは?
「年金所得」を理解する上で欠かせないのが、「公的年金等控除」という制度です。これは、年金を受け取るためにかかった費用や、年金制度の運営にかかる経費などを考慮して、税負担を軽減するためのものです。この控除があるおかげで、年金収入の全額に税金がかかるわけではないのです。
公的年金等控除の額は、年金収入の金額によって段階的に決まっています。例えば、年金収入が65歳以上で110万円以下の場合、その収入額の40%が控除額となる、といった具合です。具体的な控除額は、国税庁のウェブサイトなどで確認できますが、おおまかな目安として、年金収入の一定割合が控除されると覚えておきましょう。
この公的年金等控除を差し引いた残りが「年金所得」となり、これが所得税や住民税の計算対象となります。ですので、年金収入が同じでも、この控除額によって年金所得は変わってきます。
公的年金等控除のポイントは以下の通りです。
- 年金収入から差し引かれる「必要経費」のようなもの
- 年金収入額によって控除額が決まる
- 65歳以上と65歳未満で控除額の計算方法が異なる場合がある
年金所得の計算方法:具体例で見てみよう!
では、実際に年金所得がどのように計算されるのか、簡単な例で見てみましょう。例えば、65歳以上のAさんが、年間150万円の年金収入を得ているとします。この場合、公的年金等控除の金額は、年金収入額の40%(上限150万円)なので、150万円 × 40% = 60万円となります。
この60万円を年金収入から差し引くと、年金所得は以下のようになります。
年金所得 = 年金収入 - 公的年金等控除額
年金所得 = 150万円 - 60万円 = 90万円
この90万円が、Aさんの年金所得となり、ここから所得税や住民税が計算されることになります。もしAさんに他に所得がない場合、この90万円が所得税の課税対象所得となります。
計算のポイントは以下の通りです。
- まず、年金収入額を確認する。
- 自分の年齢(65歳以上か未満か)と年金収入額から、公的年金等控除額を調べる。
- 年金収入額から公的年金等控除額を差し引く。
税金との関係:年金所得が重要!
「年金収入」と「年金所得」の違いを理解する上で、税金との関係は非常に重要です。なぜなら、所得税や住民税を計算する際の基準となるのは、年金収入ではなく「年金所得」だからです。年金収入の額面だけを見て「これだけ税金がかかるんだ」と思ってしまうと、実際よりも多く税金を払ってしまう可能性があります。
年金所得が一定額を超えると、所得税や住民税がかかってきます。この「一定額」というのは、公的年金等控除額によって変動するため、年金収入が同じでも、控除額が大きいほど年金所得は少なくなり、税金も安くなる傾向があります。ただし、年金収入が一定額を超えると、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などの他の所得控除と合わせて、最終的な税額が決まってきます。
税金との関係で特に注意したいのは、以下の点です。
- 年金収入の全額に税金がかかるわけではない。
- 年金所得が非課税となる範囲もある。
- 他の所得(アルバイト代など)がある場合は、合算して税額が決まる。
年金所得がいくらになるかを知ることで、おおよその税負担額を把握し、賢く節税対策を考えることができます。
確定申告は必要?
「年金収入があっても、確定申告は必要なのだろうか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。結論から言うと、年金収入があっても、必ずしも確定申告が必要なわけではありません。確定申告が必要になるかどうかは、年金収入の金額や、他に所得があるかどうかによって決まります。
一般的に、公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、かつ、公的年金等以外の所得金額が20万円以下である場合は、確定申告をする必要がありません。これは、これらの条件を満たす場合、すでに源泉徴収されている税金が、最終的な税額よりも多くなっている(還付される)可能性が高いからです。しかし、税金が戻ってくる(還付される)場合でも、確定申告をすることで還付を受けることができます。
確定申告が必要になる主なケースは以下の通りです。
- 公的年金等の収入金額が400万円を超える場合
- 公的年金等以外の所得金額が20万円を超える場合
- 医療費控除や住宅ローン控除など、各種控除を受けたい場合
もし確定申告が必要な場合や、還付を受けたい場合は、毎年1月1日から12月31日までの所得について、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。税務署や税理士に相談することも可能です。
将来のために:年金収入と所得の把握を
ここまで、「年金収入」と「年金所得」の違い、そしてそれらが税金や確定申告にどう関わってくるのかを見てきました。将来、安心して生活を送るためには、自分がいくら年金を受け取れるのか(年金収入)と、そこから税金がいくらかかるのか(年金所得)を正確に把握することが不可欠です。
年金収入は、日本年金機構などから送られてくる「年金証書」や「年金振込通知書」などで確認できます。一方、年金所得は、ご自身で計算するか、税務署や税理士に相談して確認するのが確実です。これらの情報を元に、生活費の計画を立てたり、将来のために貯蓄や投資を検討したりと、具体的な行動に移していくことが大切です。
「年金収入」と「年金所得」の理解は、単に税金のためだけではありません。それは、あなたの老後の生活を豊かにするための、第一歩なのです。
この違いを理解することは、老後の資金計画において非常に重要です。年金収入の総額だけでなく、そこから差し引かれる控除などを考慮した年金所得を把握することで、より現実的な貯蓄目標や生活設計を立てることができます。将来に備えて、ご自身の年金について理解を深めていきましょう。