「情緒障害」と「発達障害」、どちらも言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何が違うの?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。この二つは、似ているようで異なる特性を持っています。今回は、 情緒障害 と 発達 障害 の 違い について、皆さんが理解しやすいように、それぞれの特徴や見られるサイン、そして支援について分かりやすく解説していきます。
特性の現れ方と原因における情緒障害 と 発達 障害 の 違い
まず、一番大きな情緒障害 と 発達 障害 の 違いは、その特性がどのように現れるか、そしてその原因にあると考えられています。情緒障害は、後天的な経験や環境、心理的なストレスなどが原因で、感情や行動に一時的または長期的な困難が生じる状態を指します。例えば、学校でのいじめや家庭環境の変化などがきっかけで、不安が強くなったり、気分が落ち込んだりすることがあります。 この「後から生じる」という点が、発達障害との大きな違いの一つです。
一方、発達障害は、生まれつきの脳の機能の特性によって、ものの感じ方や考え方、行動の仕方が他の人と異なるといった特徴があります。これは、育った環境や後天的な経験によって「後から生じた」ものではなく、幼い頃からその特性を持っているのが特徴です。発達障害の代表的なものには、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。
この二つの違いを理解するために、簡単な表でまとめると以下のようになります。
| 情緒障害 | 発達障害 | |
|---|---|---|
| 原因 | 後天的な経験、環境、ストレスなど | 生まれつきの脳の機能の特性 |
| 特性の現れ | 後から生じることが多い | 幼い頃から持っている |
社会的な関わりにおける情緒障害 と 発達 障害 の 違い
情緒障害と発達障害では、社会的な関わり方にも違いが見られることがあります。情緒障害の場合、例えば不安障害などでは、対人関係への過度な心配や、特定の状況を避けるといった行動が見られることがあります。これは、過去のネガティブな経験や、自分自身の感情をうまくコントロールできないことへの不安から生じていることが多いです。 人との関わりを避けたくなる気持ちは、誰にでも起こりうることですが、その程度や持続性が日常生活に大きな影響を与える場合に、情緒障害の可能性が考えられます。
発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)のある方の場合、相手の気持ちを読み取ることが苦手だったり、言葉の裏を理解するのが難しかったりすることがあります。そのため、一方的に話してしまったり、空気が読めないと言われてしまったりすることがあるかもしれません。しかし、これは意地悪をしているわけではなく、コミュニケーションの取り方の特性によるものです。
ADHDのある方の場合、衝動性が高いため、相手の話を最後まで聞かずに話し始めてしまったり、感情のコントロールが難しく、カッとなりやすいといった場面が見られることもあります。これらの特性は、単に「わがまま」や「落ち着きがない」と片付けられるものではなく、脳の機能の特性からくるものです。
社会的な関わり方における違いを、具体的な例で見てみましょう。
- 情緒障害の例:
- 人前で話すのが極度に怖い(社交不安症)
- 楽しいはずの集まりでも、ずっと不安で落ち着かない(全般性不安症)
- 突然、強い恐怖を感じて動けなくなる(パニック障害)
- 発達障害の例(ASD):
- 相手の表情から感情を読み取るのが難しい
- 比喩や皮肉を文字通りに受け取ってしまう
- 自分の興味のあることについて、一方的に話し続けてしまう
- 発達障害の例(ADHD):
- 人の話を最後まで聞かずに、すぐに自分の意見を言ってしまう
- 感情的になりやすく、怒りを抑えるのが難しい
- 衝動的に物を買ったり、約束を破ったりしてしまう
感情のコントロールにおける情緒障害 と 発達 障害 の 違い
感情のコントロールも、両者を区別する上で重要なポイントです。情緒障害では、感情の波が激しくなったり、特定の感情(不安、悲しみ、怒りなど)が過剰に強くなったりすることが特徴です。これは、ストレスやトラウマ、または脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなどが原因で、感情をうまく調整する機能が低下している状態と言えます。 感情のコントロールが難しいと感じることは、本人が一番辛い思いをしている部分でもあります。
発達障害の場合、感情のコントロールそのものに「障害」があるというよりは、感情の感じ方や表現の仕方が独特であったり、感情が爆発しやすい傾向があったりします。例えば、ADHDのある方は、感覚過敏や衝動性から、些細な刺激にも過剰に反応してしまい、感情が大きく揺れ動くことがあります。また、ASDのある方は、感情を言葉で表現するのが苦手なため、強い感情を抱いたときに、パニックになったり、かんしゃくを起こしたりすることがあります。
感情のコントロールに関する特性を、さらに掘り下げてみましょう。
- 情緒障害による感情のコントロール困難:
- 長期間にわたる気分の落ち込み(うつ病)
- 急激な気分の上昇と下降(双極性障害)
- 常に強い不安感に襲われる(不安障害)
- 発達障害による感情のコントロール困難(傾向):
- 感覚過敏(聴覚、触覚など)による刺激への過剰反応
- 興味や関心が極端に狭いことによる、切り替えの難しさ
- 言葉で感情をうまく表現できないことによる、フラストレーション
原因とされる脳の機能における情緒障害 と 発達 障害 の 違い
情緒障害と発達障害の根本的な違いは、その原因が脳の機能にどのように関わっているかという点にあります。情緒障害は、脳の機能そのものに生まれつきの大きな偏りがあるというよりは、ストレスやトラウマ、あるいは脳の病気などによって、感情を司る部分や、ストレス反応に関わる部分の機能が一時的または慢性的に変化した結果として現れることが多いです。 脳の機能が「変化した」という点が、発達障害の「生まれつきの特性」とは異なります。
発達障害は、生まれつきの脳の機能の「構造」や「発達の仕方」の個人差に起因すると考えられています。例えば、ADHDでは、注意を維持したり、衝動を抑えたりするのに必要な脳の領域(前頭前野など)の働きに違いがあると言われています。ASDでは、社会性やコミュニケーション、興味の幅などに関わる脳の領域の連携に特徴が見られるとされています。
原因とされる脳の機能について、もう少し詳しく見ていきましょう。
- 情緒障害:
- ストレスやトラウマによる、脳のストレス反応システムの過活動
- 脳の病気(感染症、外傷など)による機能低下
- 神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)のバランスの乱れ
- 発達障害:
- ASD: 社会性、コミュニケーション、限定された興味に関わる脳領域の神経回路の連携の違い
- ADHD: 注意、実行機能、衝動制御に関わる脳領域(前頭前野、基底核など)の機能の個人差
- LD: 読み書き、計算など特定の学習に関わる脳領域の機能の個人差
治療や支援の方向性における情緒障害 と 発達 障害 の 違い
情緒障害と発達障害では、治療や支援の方向性にも違いがあります。情緒障害の場合、原因となったストレスやトラウマを取り除いたり、軽減したりすること、そして感情をうまくコントロールするためのスキルトレーニング(認知行動療法など)が中心となります。薬物療法が用いられることもありますが、それはあくまで補助的な役割であることが多いです。 原因が特定しやすい場合や、回復を目指しやすい場合があるという点が、支援の方向性を定める上で重要です。
発達障害の場合、その特性は「治す」というよりも、「理解し、その特性と上手に付き合っていく」ことを目指します。そのため、本人の特性を理解し、その特性を活かせるような環境調整や、苦手な部分を補うための具体的なスキルの習得を支援することが大切になります。例えば、ADHDであれば、時間管理の工夫や、集中できる環境づくり、ASDであれば、コミュニケーションの取り方の練習や、感覚過敏への配慮などが含まれます。
治療や支援の方向性について、さらに具体的に見ていきましょう。
- 情緒障害の支援:
- 心理療法:
- 認知行動療法(考え方や行動のパターンを変える)
- 精神分析療法(過去の経験と現在の感情のつながりを探る)
- トラウマ治療(PTSDなど)
- 薬物療法:
- 抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬など
- 環境調整:
- ストレスの原因となる環境からの離脱、休息
- 発達障害の支援:
- 環境調整:
- 刺激の少ない静かな場所の確保
- 視覚的な指示(絵や文字)の活用
- スケジュールやToDoリストの活用
- スキルトレーニング:
- ソーシャルスキルトレーニング(SST:対人関係のスキルを学ぶ)
- アンガーマネジメント(感情のコントロール方法を学ぶ)
- 学習支援(読み書き、計算などの苦手部分を補う)
- ペアレントトレーニング(保護者向け):
- 子どもの特性を理解し、効果的な関わり方を学ぶ
このように、情緒障害と発達障害は、原因、特性の現れ方、そして支援の方向性が異なります。どちらの特性も、本人が生きづらさを感じている場合には、専門家による適切な診断と、それに合わせた支援が大切になります。もし、ご自身やお子さん、周りの方について気になる点があれば、一人で悩まずに、学校の先生やスクールカウンセラー、専門の医療機関に相談してみてください。正しい理解と適切なサポートで、より自分らしく、より快適に過ごせるようになるはずです。