「暴行」と「傷害」、どちらも相手に危害を加える行為ですが、法律上では明確な違いがあります。この二つの言葉の「暴行と傷害の違い」を理解することは、自分の身を守るためにも、また、他者への配慮のためにも非常に重要です。
暴行と傷害:その基本的な線引き
まず、暴行と傷害の根本的な違いは、「相手に怪我を負わせたかどうか」にあります。暴行は、相手に物理的な力を加えること自体を指しますが、それが直接的に相手の体に「怪我」という結果をもたらさなかった場合、暴行罪となります。例えば、相手を突き飛ばしたり、殴りかかろうとして空振りしたりする行為などがこれにあたります。 相手が怪我をしていなくても、暴力的な行為があれば暴行として罪に問われる可能性がある のです。
一方、傷害罪は、暴行の結果として相手に怪我を負わせてしまった場合に成立します。たとえ意図していなくても、暴行によって相手が打撲したり、出血したり、骨折したりといった「傷害」が生じれば、傷害罪が適用されます。つまり、暴行という行為が、怪我という結果を引き起こしたかどうかが、両者の大きな分かれ目となります。
これらの違いを理解するために、簡単な表でまとめると以下のようになります。
| 暴行 | 相手に物理的な力を加える行為(怪我の有無は問わない) |
| 傷害 | 暴行の結果、相手に怪我を負わせた行為 |
「殴る」「蹴る」:暴行の具体的な形
「殴る」「蹴る」といった直接的な暴力行為は、一般的に暴行の典型例として認識されています。相手の体に触れることで、物理的な不快感や苦痛を与える行為は、たとえ相手が転んだり、一時的に痛いと感じただけで、目に見える怪我に至らなくても、暴行罪に該当する可能性があります。
しかし、暴行は物理的な接触だけに限られるわけではありません。例えば、以下のような行為も暴行とみなされることがあります。
- 相手に唾を吐きかける
- 相手に向かって物を投げつける(当たらなくても)
- 相手に液体をかける
これらは、直接的な打撃でなくても、相手の身体に対する攻撃とみなされるため、注意が必要です。
「怪我」の範囲:傷害罪の重さ
傷害罪が成立する「怪我」は、単なる打撲や切り傷だけではありません。体の機能に障害が生じたり、病気に罹患したりすることも傷害に含まれます。例えば、相手を怒らせて心臓発作を起こさせてしまった場合なども、状況によっては傷害罪が適用される可能性があります。 怪我の程度によって、傷害罪の重さは大きく変わる ため、注意が必要です。
傷害罪で問われる怪我には、以下のようなものが含まれます。
- 軽度の打撲や擦り傷
- 骨折や脱臼
- 内臓損傷
- 精神的なショックによる体調不良
暴行と傷害:未遂の扱い
「暴行」「傷害」は、未遂の場合でも罪に問われることがあります。例えば、相手を殴ろうとしたけれど、途中で止められたり、相手がうまく避けて怪我をしなかった場合でも、暴行未遂として処罰の対象となることがあります。同様に、相手に怪我をさせようとして攻撃したが、結果的に怪我をさせられなかった場合も、傷害未遂として扱われます。
暴行・傷害と「過失」の関係
暴行罪は基本的に「故意」がなければ成立しません。つまり、相手に怪我をさせるつもりがなければ、たとえ結果的に相手が怪我をしたとしても、暴行罪とはなりません。しかし、傷害罪には「過失傷害」というものがあります。
過失傷害とは、不注意によって相手に怪我をさせてしまうことです。例えば、自転車で不注意な運転をして歩行者に怪我をさせてしまった場合などがこれにあたります。この場合、相手を傷つける意図はなくても、注意義務を怠ったことが原因で怪我をさせてしまったとして、過失傷害罪に問われることがあります。
過失傷害のポイントは以下の通りです。
- 故意ではなく、不注意による怪我
- 注意義務を怠ったことが原因
暴行・傷害:告訴と親告罪
暴行罪や傷害罪は、原則として被害者が「告訴」をしないと起訴されません。これを「親告罪」といいます。つまり、被害者が「訴えます」という意思表示をしなければ、警察は捜査を進めたり、検察官が起訴したりすることができないのです。
ただし、悪質なケースや、相手が公務員である場合などは、告訴がなくても処罰されることがあります。また、傷害罪の中でも、相手に全治○週間以上の怪我を負わせた場合など、重い傷害については、親告罪ではなくなる場合もあります。
相手との「距離」:暴行になるかどうかの判断
相手に物理的に触れなくても、暴行が成立する場合があります。例えば、相手に近づいて威嚇したり、相手が嫌がっているのに執拗に話しかけたりする行為などです。「相手に恐怖心や不安感を与える」という結果が生じれば、暴行とみなされる可能性があります。
相手との距離感や、相手がどのように感じたかが、暴行になるかどうかの判断基準になることもあります。社会生活を送る上で、相手への配慮は非常に大切です。
まとめ:知っておくべき「暴行と傷害の違い」
「暴行と傷害の違い」を理解することは、日常生活で予期せぬトラブルに巻き込まれないため、また、意図せず相手を傷つけてしまわないためにも、非常に役立ちます。暴行は「行為そのもの」を、傷害は「行為の結果」を重く見ています。どちらも相手の人格や身体を侵害する行為ですので、常に相手への配慮を忘れずに、安全な社会生活を送りましょう。