「往診」と「訪問診療」、どちらも患者さんのご自宅などへ医師が伺う医療サービスですが、実はその定義や目的にはいくつかの違いがあります。この違いを理解することは、いざという時に自分や家族にとって最適な医療を選択するために非常に重要です。今回は、この「往診 と 訪問 診療 の 違い」について、分かりやすく解説していきます。
往診と訪問診療:基本的な違いを理解しよう
まず、往診と訪問診療の最も大きな違いは、その「目的」と「継続性」にあります。往診は、基本的には「急な病状の変化」や「一時的な体調不良」に対して、医師が患者さんの元へ駆けつけることを指します。例えば、急な発熱や腹痛、怪我など、かかりつけ医がいない場合や、すぐに病院に行けない状況で利用されることが多いです。 往診は、あくまで緊急時や一時的な対応が中心となる点が重要です。
一方、訪問診療は、病気や障害のために通院が困難な患者さんに対して、計画的かつ継続的に自宅などを訪問して行う医療サービスです。慢性疾患の管理、定期的な健康チェック、リハビリテーションの指導などが含まれます。訪問診療は、患者さんの「生活の質(QOL)の維持・向上」や「在宅での療養支援」を目的としています。
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往診
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- 急な病状の変化、一時的な体調不良
- 緊急時や、すぐに病院に行けない場合
- 一時的な対応が中心
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訪問診療
:
- 通院が困難な患者さん
- 計画的・継続的な医療
- 慢性疾患の管理、健康チェック、療養支援
往診の具体的なケースと留意点
往診は、文字通り「医師が患者さんの元へ往(ゆ)き、診(み)る」という行動そのものを指します。そのため、かかりつけ医が不在の場合や、夜間・休日に急な体調悪化があった場合に、救急車を呼ぶほどではないけれど、すぐに診てもらいたい、というような場面で活用されます。往診では、その場で応急処置を行ったり、必要に応じて入院の指示を出したりすることもあります。
往診してくれる医療機関は、診療所や病院によって異なります。地域によっては、在宅医療に力を入れている診療所が往診に対応している場合や、救急対応の往診専門のサービスが存在する場合もあります。利用する際には、事前にその医療機関が往診に対応しているか、どのような場合に往診が可能かを確認しておくことが大切です。
- 急な発熱で、子供がぐったりしている。
- 転んでしまい、軽い怪我をしたが見てほしい。
- 高齢の親が、夜中に急に痛みを訴えている。
往診を依頼する際の注意点としては、費用面が挙げられます。往診には、診察料に加えて、往診料(交通費や出張費に相当)が加算されることが一般的です。また、往診はあくまで「その場での診察・処置」が中心となるため、継続的な治療が必要な場合は、別途通院や訪問診療への切り替えが必要になることもあります。
訪問診療の対象となる方々
訪問診療の対象となるのは、主に以下のような方々です。まず、寝たきりの高齢者や、重度の障害がある方など、ご自身で通院することが物理的に困難な方々です。また、難病や末期がんの患者さんで、自宅で療養しながら、専門的な医療ケアを受けたいと考えている方も対象となります。
さらに、退院後の患者さんで、在宅での療養に不安がある方や、定期的な健康管理・観察が必要な方々も訪問診療の対象となり得ます。医療機関によっては、認知症の患者さんや、看取りを自宅で行いたいと考えている方へのサポートにも力を入れています。 訪問診療は、患者さんの生活の場に寄り添い、安心できる医療を提供することを目指しています。
| 対象となる方 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 高齢者 | 寝たきり、歩行困難、一人暮らしで介助が必要 |
| 障害者 | 重度の身体障害、精神障害により通院が困難 |
| 慢性疾患患者 | 頻繁な通院が負担、自宅での治療継続が必要 |
| 終末期医療 | 自宅での看取りを希望、緩和ケアが必要 |
訪問診療で受けられる医療サービス
訪問診療では、医師や看護師が定期的に自宅などを訪問し、診察や処置を行います。具体的には、血圧測定、体温測定、脈拍測定といった基本的なバイタルチェックはもちろん、点滴の管理、褥瘡(床ずれ)の処置、カテーテルの管理、インスリン注射の指導なども行われます。また、症状に応じた薬の処方や、食事、排泄に関する相談にも応じてもらえます。
さらに、訪問看護ステーションなどと連携し、リハビリテーションの指導や、精神的なケア、看取りまで、幅広いサービスを提供している場合もあります。患者さんの状態に合わせて、医療チーム全体でサポート体制を築くことが訪問診療の大きな特徴です。 患者さんの尊厳を守り、可能な限り住み慣れた自宅でその人らしい生活を送れるように支援することが、訪問診療の重要な役割です。
訪問診療における連携の重要性
訪問診療は、医師だけで完結するものではありません。患者さんやご家族はもちろんのこと、訪問看護師、ケアマネージャー、薬剤師、ヘルパーなど、様々な職種の方々との緊密な連携が不可欠です。例えば、看護師は日々の患者さんの状態を観察し、医師に報告。ケアマネージャーは、介護保険サービスとの調整を行います。薬剤師は、訪問医の処方箋に基づいた薬の管理や服薬指導を行います。
このような多職種連携によって、患者さんの状態を多角的に把握し、より質の高い、切れ目のない医療・介護サービスを提供することが可能になります。 チーム医療の精神が、訪問診療においては特に重要視されています。
訪問診療と保険制度
訪問診療は、健康保険や介護保険の制度に基づき、サービスが提供されます。診察や処置にかかる費用は、原則として健康保険が適用され、自己負担分は医療費の1割から3割となります。また、介護保険サービスを利用している場合は、ケアプランに沿って訪問診療が組み込まれ、介護保険からの給付も受けられます。
ただし、訪問診療には、診察料の他に「訪問診療料」が加算されます。この訪問診療料は、訪問の頻度や時間、実施される医療行為の内容によって異なります。また、夜間や休日の訪問には、さらに加算される場合があります。利用を検討する際には、どのような費用がかかるのか、事前に医療機関に確認することが大切です。
訪問診療の費用は、主に以下の要素で決まります。
- 診察料(保険適用)
- 訪問診療料(月ごとの定額制が多い)
- 加算(深夜・早朝・休日加算、専門的な処置など)
往診と訪問診療の選択:どのような場合にどちらを選ぶ?
では、具体的にどのような場合に往診、どのような場合に訪問診療を選ぶべきなのでしょうか。まず、 「急に体調が悪くなった、でも救急車を呼ぶほどではない」 という場合は、往診が適しています。かかりつけ医がいれば、まずそちらに連絡するのが一般的ですが、かかりつけ医が不在の場合や、対応できない時間帯であれば、往診専門のサービスなどを検討します。
一方、 「病気や障害で、自宅で療養せざるを得ない状況が続いている。定期的に医師の診察やケアが必要だ」 という場合は、訪問診療が適しています。これは、一時的なものではなく、継続的な医療・介護が必要な状態であることを意味します。訪問診療は、計画的に行われるため、患者さんの状態の安定化や、生活の質の維持・向上に大きく貢献します。
往診と訪問診療、どちらも「自宅での医療」
両者に違いはありますが、往診も訪問診療も、患者さんが住み慣れた自宅で医療を受けられるという共通点があります。これは、患者さんご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな安心感につながります。病院での閉鎖的な空間ではなく、日々の生活を送る中で医療を受けられることは、精神的な負担を軽減し、より人間らしい生活を支えることになります。 「自宅での医療」という視点で見ると、両者は共通の目的を持っていると言えるでしょう。
往診と訪問診療の選択は、患者さんの現在の病状、身体状況、そしてご本人の意思やご家族の希望を総合的に考慮して行われます。地域包括支援センターや、かかりつけ医、ケアマネージャーなどに相談してみるのも良いでしょう。
この違いを理解することで、いざという時に慌てず、最適な医療を選択できるようになります。ご自身の状況に合わせて、積極的に活用を検討してみてください。