「形成外科」と「皮膚科」、どちらも体の「見た目」や「表面」に関わる診療科のように思えますが、実はそれぞれ得意とする分野やアプローチが異なります。この二つの科の「形成外科と皮膚科の違い」を正しく理解することは、いざという時に最適な医療機関を選ぶ上で非常に重要です。

形成外科の役割:機能と美しさの再構築

形成外科は、単に病気や怪我を治療するだけでなく、「失われた機能」や「損なわれた形」を、できるだけ元の状態に近づけることを目指す診療科です。事故や病気で顔や体に傷跡が残ってしまったり、生まれつき顔や体に形のお悩みがある場合などに、手術を通じて改善を図ります。例えば、火傷の痕を滑らかにしたり、顔の歪みを整えたりといった治療は形成外科の得意とするところです。

形成外科では、以下のような幅広い治療を行います。

  • 顔面骨骨折の治療
  • 眼瞼下垂(まぶたが下がる症状)の治療
  • 口唇裂・口蓋裂(生まれつきの唇や口の裂け)の治療
  • 良性・悪性腫瘍の切除と再建
  • 乳房再建

形成外科の最も重要な点は、見た目の改善と同時に、失われた体の機能を回復させることにも力を入れている点です。 例えば、指を失った場合に、人工指を作成したり、他の部分の皮膚や組織を使って指の機能を再現したりします。また、機能だけでなく、患者さんの精神的な負担を軽減するために、できる限り自然で美しい仕上がりを目指します。

皮膚科の専門分野:肌トラブルのスペシャリスト

一方、皮膚科は、その名の通り「皮膚」そのものの病気やトラブルを専門とする診療科です。かゆみ、湿疹、アトピー性皮膚炎、ニキビ、水虫、できもの(皮膚腫瘍)など、日常的によく見られる肌の悩みを診断し、薬物療法や外用薬などで治療します。皮膚科医は、皮膚の構造や機能、そして皮膚に現れる様々な病変について深い知識を持っています。

皮膚科で扱う主な疾患は以下の通りです。

  1. 感染症:とびひ、ヘルペス、帯状疱疹など
  2. 炎症性疾患:アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、乾癬など
  3. 腫瘍:皮膚がん(悪性黒色腫、基底細胞がんなど)、粉瘤、脂肪腫などの良性腫瘍
  4. アレルギー:アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎など

皮膚科では、専門的な検査機器を用いて、皮膚の状態を詳細に調べることがあります。例えば、皮膚の組織を少量採取して顕微鏡で調べる「皮膚生検」や、アレルギーの原因を特定するための「パッチテスト」などがあります。これらの検査結果に基づいて、最適な治療方針が立てられます。

形成外科が扱う「傷跡」:皮膚科との視点の違い

傷跡の治療は、形成外科と皮膚科の両方が関わる場合がありますが、アプローチに違いがあります。「形成外科」は、傷跡を「機能的」かつ「美容的」に改善することに重点を置きます。例えば、ケロイドや瘢痕(はんこん)など、盛り上がったり、引きつれたりした傷跡に対して、手術による切除や皮膚移植、レーザー治療などを検討します。 傷跡の見た目を改善することで、日常生活でのストレスを減らし、自信を取り戻すことも目指します。

一方、「皮膚科」では、傷跡そのものよりも、傷跡に関連する皮膚の炎症やかゆみ、感染症などの症状の緩和に注力することが多いです。もちろん、皮膚科でも外用薬や内服薬を用いて傷跡の赤みや盛り上がりを軽減する治療を行うこともありますが、根本的な傷跡の再建手術は形成外科の領域となります。

傷跡について、両科のアプローチをまとめると以下のようになります。

形成外科 傷跡の形状を整える、盛り上がりや引きつれを改善する、再建手術
皮膚科 傷跡のかゆみ、炎症、感染症の治療、赤みの軽減

生まれつきの「あざ」や「ほくろ」:形成外科と皮膚科の連携

生まれつきのあざや、大きすぎる・気になるほくろも、形成外科と皮膚科が関わる分野です。あざの種類によっては、レーザー治療が有効な場合が多く、これは皮膚科でも行われます。しかし、あざの範囲が広かったり、顔の目立つ部分にあったりして、手術による切除や再建が必要な場合は、形成外科の出番となります。

ほくろについても、良性のものであれば皮膚科でレーザーや電気メスで除去することが一般的です。しかし、悪性の可能性が疑われる場合や、傷跡を目立たなくしたいといった美容的な観点からの除去を希望する場合は、形成外科医がより専門的な判断や手術を行います。 どのような治療法が最適かは、あざやほくろの状態、そして患者さんの希望によって異なります。

ほくろの治療について、両科の視点を整理します。

  • 皮膚科 : 小さなほくろの除去(レーザー、電気メス)、良性腫瘍の診断と治療
  • 形成外科 : 大きなほくろや悪性の可能性のあるほくろの切除、傷跡を目立たなくする手術、顔面など目立つ部分のほくろの美容的除去

美容医療の領域:両科の重なりと違い

最近では、美容医療の分野でも形成外科と皮膚科が活躍しています。例えば、しわやたるみの改善、シミやくすみの治療などは、両科で実施されることがあります。皮膚科では、レーザー治療やピーリング、注入療法(ボトックス、ヒアルロン酸など)を得意としており、肌質改善や軽度のエイジングケアに強みがあります。

一方、形成外科では、より手術を伴う美容整形(鼻の整形、まぶたの整形、豊胸など)や、顔のたるみを根本的に改善するフェイスリフト手術などを行います。また、傷跡を目立たなくする手術と同時に、美容的な観点から顔のバランスを整えることも得意としています。 美容医療においては、単に見た目を良くするだけでなく、機能的な側面も考慮されるのが形成外科の特徴と言えます。

美容医療の代表的な治療法と、それぞれの科の得意分野を比較してみましょう。

  1. しわ・たるみ
    • 皮膚科: ボトックス、ヒアルロン酸注入、レーザー治療、糸リフト
    • 形成外科: フェイスリフト手術、眉下切開、埋没法(二重手術)、脂肪吸引
  2. シミ・そばかす
    • 皮膚科: レーザー治療、光治療、内服薬、外用薬
    • 形成外科: (原則として皮膚科の範疇ですが、レーザー治療器を導入している場合もあります)

「できもの」の診断と治療:悪性か良性かの見極め

皮膚にできる「できもの」は、良性の場合もあれば、悪性(がん)の場合もあります。この「できもの」の診断と治療において、形成外科と皮膚科は非常に密接に関わっています。皮膚科医は、日常的に多くの「できもの」を診察しており、経験に基づいた診断を行います。見た目から良性か悪性かを判断し、必要に応じて専門的な検査を行います。

もし、「できもの」が悪性腫瘍(皮膚がんなど)の疑いがある場合や、診断が難しい場合は、形成外科医に紹介されることがあります。形成外科医は、腫瘍の切除手術と、その後の再建手術の経験が豊富であり、より複雑な「できもの」にも対応できます。 早期発見・早期治療が何よりも大切であり、どちらの科を受診すべきか迷った場合は、まずは身近な皮膚科で相談するのが良いでしょう。

「できもの」の治療について、両科の連携のポイントは以下の通りです。

  • 皮膚科 : 初診での「できもの」の診察、良性腫瘍の診断と治療(切除、レーザーなど)、悪性腫瘍が疑われる場合の専門医への紹介
  • 形成外科 : 悪性腫瘍の切除手術、再建手術、病理検査の結果に基づく追加治療の判断

このように、「形成外科と皮膚科の違い」は、それぞれのアプローチや得意とする治療法にあります。どちらの科を受診するか迷った際は、まずはご自身の症状や悩みを整理し、どちらの科がより適しているかを考えてみてください。不安な場合は、かかりつけ医に相談するのも良い方法です。適切な科を受診し、健康で美しい肌と体を目指しましょう。

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